サーミ人の癌の不思議

NHKの報道でやってたのは

スウェーデンでガンが増えたぞ!大変だ!
という件で、 これはおそらくトンデル論文


だけどトンデル論文をちゃんと読んでみると 大して増えてないのがわかる。。
微妙??な差ぐらいなもん(今中先生の参照)  ←この時点で既にNHKは嘘

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No104/CNIC0602.pdf
まあ、一回読んどいてもいいと思うし。
というかこの論文、実は、癌死リスクの追加分は 3% 、、

>114 万人を対象に 1988〜96 年の間に観察された2万2409件のガンのうち、
>849件がチェルノブイリからの放射能汚染によるものだ、と見積もっている。

とあるので、癌原因の中での比率がそもそも 849÷22409=0.03  3%
対象人数からの比率は、 849 ÷ 1140000=0.00074 0.074%  10年間で人口の0.074%が放射線関連の癌を発症と言ってるだけ。



それでもスウェーデン在住の学者さんは
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/6c768f8d028351291a58069838c7d812
サーミ人がトナカイ食べて内部被曝があがってるから、そのせいじゃないか?

たしかにトナカイ食の内部被曝値は高い
http://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/Global/Publikationer/Tidsskrift/Stralskyddsnytt-nr1-2006-tema-Tjernobyl.pdf


http://ijch.fi/issues/675/67(5)%20Hassler.pdf
しかし実はサーミ人の癌は普通の人より低い
遺伝的要因とか、生活習慣的に適合してるんじゃないか?という推測

???
そもそもサーミ人の死亡率はあがってるのか?


サーミ人はガンで死ぬ人は割と少ないが、けがや心血管や脳梗塞で余計死んでいて、合計としては通常より少し死亡率が高い。(要するに、ガンで死ぬ前に死んでる)

http://www.cairn.info/revue-annales-de-demographie-historique-2006-1-page-115.htm
先住民族としてのサミ。過去には死亡率が高かったが、現在では通常と同じであること。
ただし、民族混在化が起きていて、すでに特定が難しくなりつつあることなど。
http://sjp.sagepub.com/content/35/3/306.short
ノルウェーサーメ人の人口の死亡率、1970年から1998年
そもそもの死亡率はわずかに高い。 癌死亡率は低いが、けがと脳血管、および心血管関連の死亡原因が高い。 ライフスタイルと社会的要因、遺伝的要因によるものと推測


http://oem.bmj.com/content/67/11/737.abstract
ただし15歳以下で被曝値があがった層だけは、癌の発症率が高い(特に胃がん甲状腺癌)
この統計は有意差があるかもしれない。(だけど観察数が少なすぎ、、、orz)
全体
http://twitpic.com/84me03
15歳未満
http://twitpic.com/84kur1
↑naka-takeさんの指摘あり(症例数が少なすぎて有意差を主張するのは無理)


これらから得られる考察は、、、
スウェーデンチェルノブイリ時の降下物は、1960年代の時点とあまり変わりがない。つまり、トナカイ食のサーメ人は50年にわたってセシウム食を続けている。(濃度はピークから減ってる) その結果がこの癌発症率ならば、セシウム内部被曝は癌化とは関係がないか、あるいは、サーメ人の特異性(遺伝形質?生活スタイル?食習慣?)のため癌化しないか、あるいは、初期蓄積時に被害があっても、時期を過ぎれば適応してしまうか。という感じになるのかもしれない。
癌化以外の病状については検証されていないので、そちらはまた別のはなし。


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会話

コーリー2012年01月08日 11:31
>トナカイ食のサーメ人は既に放射性セシウムに適合してしまった可能性
流石に時間が短すぎるのでは?



naka-take2012年01月08日 12:04
この統計はかなり有意差がある>というのが、地域による特異性なのか、一般化できるかで意味合いが全然違いますよね〜 他の地域で差が無いんだったら「その地域だけあたりを引いた」だけですし。このデータからは「放射線で皮膚がんが低くなる」という結論も出せちゃいますな。@母集団の数が少ないので、1例での影響により誤差でまくるので御注意。



リーフレイン2012年01月08日 12:08
1960年からですから、、案外ありかも、そもそも、サーメ人は1980年代まで乳児死亡率が高かったんですよ。かなり淘汰されてきた民族なんじゃないですか?
あと15歳未満での被曝は数字がでているということは、若いとまだ影響があるってことです。
それと、ラットの実験でも、甲状腺の蓄積初期には蓄積があがって、暫くすると(人間に比較すれば数年ぐらいだと思うんですが) 蓄積量が落ち着くという数字が出てました。 
同様に肝機能でも、遺伝的適合のマーカーがラットで観察されています。  
セシウムの問題は25%ある血漿側での動作でもあったんですが、そちらが案外早く適合していく可能性ってあるかもしれないなあって思いました。



リーフレイン2012年01月08日 12:10
naka-takeさん
>母集団の数が少ないので、1例での影響により誤差でまくるので御注意。
これは否めないですねえ。たった6例ですもんね。。



コーリー2012年01月08日 12:37
数世代じゃよほど強い淘汰圧でも目に見える違いは現れないんじゃないかと・・・・
品種改良的に異常遺伝子を強めれば別かもしれませんが。

>乳児死亡率が高かった
「非文明圏」においては【非常に高い】のは普通ではないかと
そしてその要因は感染症や栄養失調、事故などであり
放射性物質の影響は大きくないでしょう?



リーフレイン2012年01月08日 12:53
http://d.hatena.ne.jp/leaf_parsley/20111126
ラットの論文が有効だとすれば、ラットの場合で適合反応が数週間でみえてたわけだから。(1世代もかかってないです)案外早く起きる可能性ってないですか

花粉と吸入係数の話

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111227-00000053-mai-soci
来春の花粉シーズンを前に福島県など16都県でスギ花粉に含まれる放射性セシウムの濃度調査を行っている林野庁は27日、福島県内の調査地点のうち87カ所分のデータを中間報告として公表した。87カ所の最大値をもとに試算したところ、花粉の吸引で受ける放射線量は毎時0.000192マイクロシーベルト程度で、同庁は「花粉の吸引による被ばくを心配する必要はない」としている。

 同庁は、東京電力福島第1原発事故による森林汚染の問題化や、花粉が数百キロ飛ぶこともあることから「関心が高い」として調査した。

 福島など東日本約180カ所で、花粉を出すスギの雄花を採取し、うち福島県内の原発に近い地域を中心に中間報告をまとめた。

 87カ所のうち、最も雄花のセシウム濃度が高かったのは浪江町内のスギで1キロあたり25万3000ベクレルだった。ただ、スギ花粉は1個あたりが非常に軽く、データのある過去9年間で最大だった08年3月の飛散量(1立方メートルあたり花粉2200個)をもとに試算しても、1時間で受ける放射線量は成人で0.000192マイクロシーベルト程度との結果が出た。

 また、首都大学東京大学院の福士政広教授(放射線安全管理学)も11月に独自で調査を行い、東京都奥多摩町で採取したスギの雄花を分析したところ、1キロあたり93ベクレルだった。福士教授は「人体への影響を心配しなくていい数値だ。それでも気になる人は花粉用のマスクやゴーグルの着用で、セシウムが付着した花粉防止の効果が期待できる」としている。【曽田拓】

http://www.wa-dan.com/article/2011/11/post-199.php

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まず、1立方メートル当たり花粉2200個というのはどのぐらいの量かというと、、、
まず花粉一つの重さは1億分の1gぐらい。
したがって、一立方メートルあたりの花粉のg数は 1億分の2200g
キログラム換算で 1億分の2.2キログラム。

したがって濃度25万3000ベクレルの花粉の場合、1立方メートルあたりのベクレル数は
25万3000ベクレル/Kg×1億分の2.2Kg=0.005566ベクレル

人が一日に吸う空気の量は大体20K 0.5リットル×28,800回=14,400リットル
http://www.daikin.co.jp/naze/html/d_1.html
1立方メートルは1000リットルなので、14,4立方メートル分の空気を吸う。
一日の摂取ベクレルは、14.4×0.005566=0.08ベクレル
http://keisan.casio.jp/has10/SpecExec.cgi?path=01500000.%8A%C2%8B%AB%82%CC%8Cv%8EZ%2F08000000.%95%FA%8E%CB%94%5C%2F10030520.%95%FA%8E%CB%94%5C%82%CC%93%E0%95%94%94%ED%94%98%90%FC%97%CA%81i%8Bz%93%FC%81j%2Fdefault.xml

吸入時の換算係数を使って、、、

http://keisan.casio.jp/has10/SpecExec.cgi
30日で0.09μシーベルト。(大人)






各種係数

組織荷重係数
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/s_kajyu.html
放射線荷重係数
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/h_kajyu.html
実効線量係数
http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/Yougo/j_senkeisu.html
セシウム
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html
ストロンチウム
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/8.html
緊急時
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html


過去の数値
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2003Artifi_Radio_report/coverJP.htm

スギ花粉(雄花)と放射線量の関係グラフ
http://twitpic.com/83ei99

吸入時の粒子径の影響
「様々なサイズのナノ粒子のin vivo 肺毒性比較試験」p87より
http://www.aist-riss.jp/projects/nedo-nanorisk/nanorisk_symposium2008/pdf/abstractbook_ja.pdf#page=73



核分裂初期の大きさ(核分裂生成物ーまず二つに割れる)
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/6734/kisogenri/seiseibutu.html

化合 各種エアロゾルの粒径(エアロゾル粒子を球形とみなしたときの直径)範囲
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-03-21
各種エアロゾルの粒径(エアロゾル粒子を球形とみなしたときの直径)範囲
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040321/04.gif


http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-04-04-12
吸入摂取に関わる線量係数の算出に当たって、ICRPは職業人の場合も公衆の場合も「人呼吸気道モデル」を用いているが、そこでは吸入されたエアロゾルの呼吸気道における沈着の部位と量はそのエアロゾルの大きさ(粒径)に依存する。職業環境での放射性物質の粒径に関する、これまでの調査から、職業人の線量係数算定に当たっては空気動力学中央径AMADで表して5μmを用いている。これに対し公衆の構成員の線量係数算定の場合には1μmを仮定している。なお、Publ.68では参照のためとして1μmのエアロゾルに関わる線量係数も計算し表示している。
 吸入されたエアロゾルの呼吸気道における沈着の場所と量は呼吸様式にも依存する。職業被ばくでは作業者は軽作業を行っていると仮定する。1日8時間の軽作業の中では、2時間半を座った状態で過ごし、この間は1分間に12回の呼吸率で1時間に0.54m3の空気を呼吸する。残りの5.5時間は軽い運動をしている状態で、この間は1分間に20回の呼吸率で1時間に1.5m3の空気を呼吸するとしている。沈着を考えるに当たっては、両者を吸入空気量で荷重した平均を用いている。これに対し、公衆の構成員の場合には、1日を睡眠、座った状態、軽い運動をしている状態、激しい運動をしている状態に分け、それぞれで過ごす標準的な時間から導いた1日に呼吸する空気量(22.21m3)等を用いている。同じ成人ではあるが、職業被ばくと公衆被ばくでは仮定するエアロゾルの粒径が異なり、呼吸の生理も異なり、これらのことが異なった線量係数が与えられていることに繋がっている。

吸入エアロゾルの人体モデル
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040321/05.gif

吸入時の 急速、中庸、低速吸収による係数
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040412/01.gif

http://www.posiva.fi/files/225/WR2006-56web.pdf


ツイッターでの会話(吸入係数について)
http://togetter.com/li/237513

詩 年越しの夢

「年越しの夢」

天井から御婦人方が降りてきて綾取りを始めた
あれよ、あれよという間に8畳の部屋は妙齢の美しい御婦人方
で占領されてしまい私は急いで起き上がって正座した

そんな部屋の主の事など全くおかまいなく、
御婦人方はにこにこと複雑な綾取りをとっている
2,3人で一つの模様を作り上げ、次の模様へと渡っていく
流れるような仕草で金色の鎖紐やら、赤い毛糸のようなものやら、
いつともなしに追加され、花が次々咲いていくような眩暈

ふと一人の御婦人と目があった
にっこり笑って、彼女の綾取りを私の方に差し出してくる
いやはや、これをどうしろというのだ
おっかなびっくり手を伸ばし、
右小指に一本、左小指にもう一本
顔をあげると、婦人方が一斉にこちらを覗き込んでいる。
冷や汗が たらあり

きゃいきゃいと笑い声
黒豆がゆすゆす
お盆の中で揺れていた

ロシャールさんの論文

Stakeholder Involvement in the Rehabilitation of Living Conditions
in Contaminated Territories Affected by the Chernobyl Accident:
the ETHOS Project in Belarus
チェルノブイリ事故の影響によって汚染された地域における生活環境の回復に、ステークホルダーを関与させる試み:ベラルーシエートスプロジェクト」
Jacques Lochard
Centre d'étude sur l'Evaluation de la Protection dans le domaine Nucléaire
Fontenay-aux-Roses, France

Whatever men do or know or experience can make
sense only to the extent that it can be spoken about.
Whatever enters the human world of its own accord or is drawn
into it by human effort becomes part of the human condition.
Hannah Arendt - The Human Condition, 1958

人々が行い、知り、経験するものはなんであれ、それについて語られる限りにおいてのみ有意味である。この世界に住み、活動する多数者としての人間が、経験を有意味なものにすることができるのは、ただ彼らが相互に語り合い、相互に意味づけているからにほかならないのである
ハンナ・アーレント「人間の条件」より1958

Abstract 要約
The management of the Chernobyl post-accident situation is a complex process comprising not only radiological protection but also psychological, social, economic, political and ethical dimensions.
チェルノブイリ事故後の状況の管理は、単なる放射線防護の意味だけでなく、心理的、社会的、経済的、政治的、そして倫理的な側面を含んだ複雑なプロセスとなっています。

Involving in this process local communities who are directly concerned by the consequences of the accident is a strong lever in improving their living conditions as well as restoring their confidence in experts and the authorities.
この回復プロセスに事故によって直接影響をうけた地域の住民を取り込むことは、生活環境の改善のみならず、政府や専門家への信頼をとりもどすうえでも大事なキーとなります。

This paper presents the experience of the involvement of a group of mothers from a village of the Republic of Belarus in activities to improve the radiological protection of their children.
本稿では、ベラルーシの村で実際の母親グループが子ども達の放射線防護を改善していく活動に関与した例を提示します。

This experience took place in the framework of the ETHOS Project supported by the radiation protection research program of the European Commission with the objective of implementing an alternative approach to the rehabilitation strategies adopted so far in the contaminated territories of the CIS.
この試みはETHOSプロジェクトの枠内で行われました。ETOHSプロジェクトは欧州委員会放射線防護の研究プログラムによってサポートされているプロジェクトで、CIS領土内の汚染地域の回復戦略の代替アプローチを調査するプログラムです。

The first part of the paper presents briefly the main features of the methodological and practical approach of the ETHOS Project.
論文の最初の部分は、この関与についての主な方法と実際のETHOSプロジェクトでのアプローチを記述しています。

The second part describes in more detail: how the mothers voluntarily got involved in a working group set up in the framework of the Project, the characterization of the radiological situation they carried out, the concrete approach they developed to regain control of the situation, the way the health care system has been involved in the process and finally, the results they achieved in terms of reduction of the internal contamination of their children.
後半では、より詳細にーどのように母親グループが自発的にプロジェクトの枠組みの中でWGの関与を受け入れていったか ー 放射線の状況を把握し、計測し、彼女たちのおかれた状況を実際に改善していくような手段を考え、健康を維持していくよう務め、最終的には子ども達の内部被曝の減少に結びついていったかについて、記述します。

WGページにアップされた 【海外の専門家から寄せられたメッセージ】邦訳付きで親切。

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/news_111110.html


Mikhail Balonov(ミハイル・バロノフ)露サンクトペテルブルグ放射線衛生研究所教授
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Mikhai_Balonov.pdf
福島では、子どもが 2011 年 3 月から 4 月にかけて、放射性物質を含むミルクを飲まなかったこ
とにより、この種の放射線被ばくは非常に小さかったといえます。このため、近い
将来あるいは、遠い将来、どんな甲状腺疾患の増加も予想できません。
1986 年のロシアのブリャンスク地域における被ばく状況の比較と 2011 年の福島県
比較から、日本の人口における放射線起因の特別の疾患の増加はありそうもないと
いうことができます。

Werner Burkart (ウェルナー・ブルカルト)前IAEA事務局次長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Werner_Burkart.pdf
電離放射線の恐怖やリスク認知(不安)が高いままであることは理解できます。この負担を背負う地
元の皆さんには、破壊と汚染を克服するための決定に参加する権限を与えられなけ
ればなりません。複雑な科学ではなく、自然の放射線レベルとその変動、および続
いて起こる健康上のリスクとの正当な比較により、この復興への課題についての共
通の理解を得、福島における放射性降下物からの過度の危険がないという将来への
確信を得ることができると思います。これに関しては、放射性セシウムの体内への
取り込みの全身計測と崩壊エネルギーや代謝が似ている自然起源の放射性カリウム
との比較が役に立つでしょう。

Roger H. Clarke (ロジャー・クラーク)ICRP 主委員会名誉委員
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Roger_H_Clarke.pdf
2007 年勧告における被ばくリスクの再評価により、単位線量あたりの致命的な
がんのリスクは、1990 年勧告に比べてより低い値となりました。これは、同じ防
護レベルを達成する線量限度が、1990 年勧告よりも 2007 年勧告の方が高いことを
示唆しています。委員会は、線量限度の数値を下げずに保留しました。その結果
線量限度の被ばくにおける防護レベルは 1990 年勧告よりも強化されています。
職業人あるいは公衆を問わず妊婦について、ICRP は、妊娠した患者の医療被ば
くを除き、全ての被ばく状況において、胚/胎児は公衆の一員と見做して公衆に用
いられるのと同じ拘束値と参考レベルを用いるべきであると明言しています。
ICRP は、胚/胎児への 100 mGy 以下の吸収線量の被ばくが、妊娠中絶の理由と考
えられないように助言します。

John D. Boice Jr. (ジョン・ボイス)ICRP主委員会委員、米ヴァンダービルト大学医学部教授、国際疫学研究所科学部長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/John_D._Boice_Jr.pdf
従って、福島はチェルノブイリとは異なる。福島の原子炉は格納容器があり、格納容器は無事であった。放射性物質は環境に放出されたが、放出された放射性物質のすべてではないが大半は太平洋に向かって飛んでいった。放射性物質は人口集中地域に堆積したが、当局が周辺住人を迅速に避難させて食料供給を制限したため、有意な集団被曝には至らなかった。被曝が低線量であったことは、住人の測定やスクリーニングで裏付けられた。原発作業員についても、主に作業中の慎重な放射線測定と交代のおかげで、急性放射性障害を経験した作業員はいなかった。
それにもかかわらず、放射線被ばくレベルがいわゆる国際的な参考レベルである20mシーベルトに近づいている地域があり、この参考レベルを超えているかもしれないという懸念が高まっている。さらに、余命が大人より長く、成長中で組織分裂が速いなどよく言われる理由により、大人よりも放射線に対する感受性が高い子ども達の被曝がとくに心配されている。しかし、放射性物質は崩壊し、風化作用により土壌中の組成が変化するため、環境ちゅうの放射能レベルは時間と共に低減する、つまり、来年の放射能レベルは現在よりも低くなっていく。
とはいえ、避難者たちが元の居住地に戻れるようになる前に、人口集中地域の放射線レベルを慎重に評価しなければならない、長期的にみれば、この地震津波・原子炉溶融という三重の災害と、それに伴う最愛の人達や財産の喪失、および、避難による生活の崩壊から生ずる精神的問題や心理・社会的問題が増えるのではないかという懸念もある。今日までのところ、周辺住人や作業員らに対する放射線被ばくレベルはとても低く、仮に一名にガンが生ずるとしても、疫学調査においてがんリスクが増加するこを検知できないだろう。現在評価されている低線量では、生涯におけるがんリスク42%の増加は観測されないだろう。しかし住人は、被曝線量がある程度正確に推定でき、将来健康影響が生じる可能性が低いという安心が得られるよう、現在行われている健康調査に参加したほうがよい。

Victor Ivanov(ビクトル・イワノフ)露保健・社会発展省オブニンスク医学放射線研究所副所長、露放射線防護委員会議長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/Victor_Ivanov.pdf
福島原発事故による公衆や原発作業員の被ばく線量のいずれの試算データからも、潜在的健康
リスクを有するグループの規模は、もしあるとしても、非常に小さいと推測されます。しかしながら、公衆、特に 4 歳未満の子どもには、今後予想される被ばく線量をさらに軽減するために、実現可能
な努力をすべて行うことが必要です。
これと並行して、福島県住民の精神的ストレスの緩和は、特に重要な問題です。信頼できる放射
線疫学情報は、これからの住民対策に必須なものになるでしょう。

Hajo Zeeb(ハーヨ・ツェーブ)独ブレーメン予防研究・社会医学研究所 予防・評価部長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/Hajo_Zeeb.pdf
福島県における広範囲な環境の放射能汚染について、一方では徹底的な汚染状況の評価が
必要です。また、他方では、この評価に基づく効率的で迅速な対応が必要です。これらの取組み
において、原発事故後における近隣住民や作業員の健康状態に関する事実と、憶測とを分けて
考える事が非常に重要です。現在、除染活動が進行中であり、すでに福島県民の実際の放射線被ばく線量を評価する大規模なプロジェクトが展開されています。電離放射線による他の被ばく状
況と比較することは、東電福島原発事故の公衆だけでなく作業員についての健康影響を、より正
しく理解するのに非常に有用です。私と放射線疫学者は、宇宙放射線による航空機乗組員の被
ばく、そして原子力作業従事者や医療画像診断を受診した患者の健康影響調査を含む、放射線
被ばくの健康リスク研究から得られた適切な専門知識に基づき、日本への支援を提供します。今
回の大災害とその影響に関する公平で信頼できる情報、そして協議が必要です。この点において、
お力になれれば幸いです。

バンダジェフスキー剖検論文

彼は、1990年代の前半のセシウム汚染が激しい時期にゴメリ地区の病院の長を務めていた教授で、多くの臨床例に接しています。 その結果の論文として
1、「慢性的なCs - 137の子供の臓器での取り込み」
http://www.smw.ch/docs/pdf200x/2003/35/smw-10226.PDF
ゴメリ地区でなくなった子ども達の、臓器の解剖研究ー臓器ごとにセシウム蓄積を測っています。

2、チェルノブイリの子ども達のセシウムの蓄積量と心血管の徴候との関係 -予備的考察:リンゴペクチンの経口摂取後の観察 http://tchernobyl.verites.free.fr/sciences/smw-Galina%20Bandazhevskaya.pdf
パンダジェフスカヤ教授(奥さん)が主筆になっています。94人の子ども達の研究

3、セシウムの心臓への影響
http://radionucleide.free.fr/Stresseurs/Radioactive_caesium_and_heart_eng.pdf
いくつかの論文のまとめと、ゴメリ地区での症例研究)

などがあります。 前回の日記では、2番目の論文の考察を行いましたが、ここでは最初の論文について少し。

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ベラルーシのゴメル地方では、放射能による子供の被害が出ていて、その多くがヨウ素のせいと報告されている。でも時間がたってから発病するケースや、事故後生まれていなかった子供の場合では、すぐ半減してしまうヨウ素が原因とは思えないケースも多々ある。

セシウムについては、お母さんの血液が100ベクレル/kgまでなら胎児に行かない。でもそれ以上だと障害が出る場合がある。子供たちにとってはミルクとかキノコとか、セシウムのたまりやすい食べ物が重大な影響をもつこともあるから、セシウムの子供への影響を調査した。

・まず、低レベルのセシウム胎盤が吸収し、またはブロックしてお母さんの血液に返し、おなかの中の胎児には影響しなかった(良かったですよね)。でも高いレベルだと影響があったが、その場合は多くの場合、流産した。

・事故後10年たって、放射性ヨウ素はほとんど無い時期に生まれて、半年だけ生き延びた赤ん坊6人を解剖して、その内臓にセシウムがたまっているかどうかを調べた(表1)。(本文よりbq/kgであることがわかります)心臓、甲状腺、胸腺、副腎、膵臓などにたまっていました。脳にもたまっていました。(著者は考察していませんが、脳の方が重いので、器官あたりの量だと相当な割合が脳にたまっていることになります。)

・つぎに、1997年に死亡した子供と、その子供と同じ地域で同じ生活をしていて死亡した大人を解剖して、放射性セシウムを比較しました。同じ生活をしていた大人と比較して、すべての器官で子供の方が多く吸収していました。心臓、甲状腺、小腸は子供は大人の倍以上でした。この子供たちはチェルノブイリの時は未だ生まれていないので、ヨウ素の被害では死亡していないはずです。(図1、調査人数不明だけど複数。大人と子供は、おそらく1997年頃に同時に死亡した家族。)

・最後に、チェルノブイリの頃にすでに生まれていて、1997年に死亡した年長の子供52人を解剖して調査しました。(表2)(標準偏差が異様に低いです。つまりぶれが少ないです。これもkgあたりです。図1に類似した傾向を示しました。)
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という感じです。

ゴメリ地区というのは、ベラルーシ南部に位置する農村地域で、原発から少し離れたホットスポットにあたっていたため、放射性降下物濃度が高かったことが分かるのが遅れてしまった地域になります。農村内部での自家消費分も多い地域であったため(キノコとかミルクとか、色々ですね) 初期被曝も、その後のセシウム蓄積も非常に高くなってしまいました。

この論文で、非常に困るのは、剖検前にどれだけの体内蓄積量を持っていたのかが不明な点でして、それに加えて剖検時の手順も書いてないために、どのぐらいの損失があったとか、各臓器の重さをどのぐらいに見ればいいのか?とかも分からないので、逆算して推測するのも、ちょっと難しい状態にあります。
彼らの蓄積は確かにあるわけですが、それが「極端に過剰なセシウム蓄積」によってもたらされているのか、それとも「ふつうにありそうなセシウム蓄積」でもこうして死亡している例があるのか? そして何より、どういう機序でもたらされたのか? 追試で再現性が見られないのはなぜか?(><)

福島へ演繹して考える場合、「こうならないための濃度」を知りたいわけですが、。。。。非常に悩ましい論文です。

→後日派生したツイッターでの会話
http://togetter.com/li/230022