WGページにアップされた 【海外の専門家から寄せられたメッセージ】邦訳付きで親切。

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/news_111110.html


Mikhail Balonov(ミハイル・バロノフ)露サンクトペテルブルグ放射線衛生研究所教授
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Mikhai_Balonov.pdf
福島では、子どもが 2011 年 3 月から 4 月にかけて、放射性物質を含むミルクを飲まなかったこ
とにより、この種の放射線被ばくは非常に小さかったといえます。このため、近い
将来あるいは、遠い将来、どんな甲状腺疾患の増加も予想できません。
1986 年のロシアのブリャンスク地域における被ばく状況の比較と 2011 年の福島県
比較から、日本の人口における放射線起因の特別の疾患の増加はありそうもないと
いうことができます。

Werner Burkart (ウェルナー・ブルカルト)前IAEA事務局次長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Werner_Burkart.pdf
電離放射線の恐怖やリスク認知(不安)が高いままであることは理解できます。この負担を背負う地
元の皆さんには、破壊と汚染を克服するための決定に参加する権限を与えられなけ
ればなりません。複雑な科学ではなく、自然の放射線レベルとその変動、および続
いて起こる健康上のリスクとの正当な比較により、この復興への課題についての共
通の理解を得、福島における放射性降下物からの過度の危険がないという将来への
確信を得ることができると思います。これに関しては、放射性セシウムの体内への
取り込みの全身計測と崩壊エネルギーや代謝が似ている自然起源の放射性カリウム
との比較が役に立つでしょう。

Roger H. Clarke (ロジャー・クラーク)ICRP 主委員会名誉委員
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Roger_H_Clarke.pdf
2007 年勧告における被ばくリスクの再評価により、単位線量あたりの致命的な
がんのリスクは、1990 年勧告に比べてより低い値となりました。これは、同じ防
護レベルを達成する線量限度が、1990 年勧告よりも 2007 年勧告の方が高いことを
示唆しています。委員会は、線量限度の数値を下げずに保留しました。その結果
線量限度の被ばくにおける防護レベルは 1990 年勧告よりも強化されています。
職業人あるいは公衆を問わず妊婦について、ICRP は、妊娠した患者の医療被ば
くを除き、全ての被ばく状況において、胚/胎児は公衆の一員と見做して公衆に用
いられるのと同じ拘束値と参考レベルを用いるべきであると明言しています。
ICRP は、胚/胎児への 100 mGy 以下の吸収線量の被ばくが、妊娠中絶の理由と考
えられないように助言します。

John D. Boice Jr. (ジョン・ボイス)ICRP主委員会委員、米ヴァンダービルト大学医学部教授、国際疫学研究所科学部長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/John_D._Boice_Jr.pdf
従って、福島はチェルノブイリとは異なる。福島の原子炉は格納容器があり、格納容器は無事であった。放射性物質は環境に放出されたが、放出された放射性物質のすべてではないが大半は太平洋に向かって飛んでいった。放射性物質は人口集中地域に堆積したが、当局が周辺住人を迅速に避難させて食料供給を制限したため、有意な集団被曝には至らなかった。被曝が低線量であったことは、住人の測定やスクリーニングで裏付けられた。原発作業員についても、主に作業中の慎重な放射線測定と交代のおかげで、急性放射性障害を経験した作業員はいなかった。
それにもかかわらず、放射線被ばくレベルがいわゆる国際的な参考レベルである20mシーベルトに近づいている地域があり、この参考レベルを超えているかもしれないという懸念が高まっている。さらに、余命が大人より長く、成長中で組織分裂が速いなどよく言われる理由により、大人よりも放射線に対する感受性が高い子ども達の被曝がとくに心配されている。しかし、放射性物質は崩壊し、風化作用により土壌中の組成が変化するため、環境ちゅうの放射能レベルは時間と共に低減する、つまり、来年の放射能レベルは現在よりも低くなっていく。
とはいえ、避難者たちが元の居住地に戻れるようになる前に、人口集中地域の放射線レベルを慎重に評価しなければならない、長期的にみれば、この地震津波・原子炉溶融という三重の災害と、それに伴う最愛の人達や財産の喪失、および、避難による生活の崩壊から生ずる精神的問題や心理・社会的問題が増えるのではないかという懸念もある。今日までのところ、周辺住人や作業員らに対する放射線被ばくレベルはとても低く、仮に一名にガンが生ずるとしても、疫学調査においてがんリスクが増加するこを検知できないだろう。現在評価されている低線量では、生涯におけるがんリスク42%の増加は観測されないだろう。しかし住人は、被曝線量がある程度正確に推定でき、将来健康影響が生じる可能性が低いという安心が得られるよう、現在行われている健康調査に参加したほうがよい。

Victor Ivanov(ビクトル・イワノフ)露保健・社会発展省オブニンスク医学放射線研究所副所長、露放射線防護委員会議長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/Victor_Ivanov.pdf
福島原発事故による公衆や原発作業員の被ばく線量のいずれの試算データからも、潜在的健康
リスクを有するグループの規模は、もしあるとしても、非常に小さいと推測されます。しかしながら、公衆、特に 4 歳未満の子どもには、今後予想される被ばく線量をさらに軽減するために、実現可能
な努力をすべて行うことが必要です。
これと並行して、福島県住民の精神的ストレスの緩和は、特に重要な問題です。信頼できる放射
線疫学情報は、これからの住民対策に必須なものになるでしょう。

Hajo Zeeb(ハーヨ・ツェーブ)独ブレーメン予防研究・社会医学研究所 予防・評価部長
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai8/Hajo_Zeeb.pdf
福島県における広範囲な環境の放射能汚染について、一方では徹底的な汚染状況の評価が
必要です。また、他方では、この評価に基づく効率的で迅速な対応が必要です。これらの取組み
において、原発事故後における近隣住民や作業員の健康状態に関する事実と、憶測とを分けて
考える事が非常に重要です。現在、除染活動が進行中であり、すでに福島県民の実際の放射線被ばく線量を評価する大規模なプロジェクトが展開されています。電離放射線による他の被ばく状
況と比較することは、東電福島原発事故の公衆だけでなく作業員についての健康影響を、より正
しく理解するのに非常に有用です。私と放射線疫学者は、宇宙放射線による航空機乗組員の被
ばく、そして原子力作業従事者や医療画像診断を受診した患者の健康影響調査を含む、放射線
被ばくの健康リスク研究から得られた適切な専門知識に基づき、日本への支援を提供します。今
回の大災害とその影響に関する公平で信頼できる情報、そして協議が必要です。この点において、
お力になれれば幸いです。