現存被曝状況について考えていたこと。。

3月21日のICRPからの通達
http://www.u-tokyo-rad.jp/data/fukujap.pdf

放射線防護の線量基準の考え方 第22回会議の資料 4月10日  (イメージ図)
http://www.nsc.go.jp/info/20110411_2.pdf

緊急時準備区域と計画的避難区域の指定 4月10日
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan022/siryo_ex.pdf

4月27日首相官邸HP
放射線から人を守る国際基準
〜国際放射線防護委員会(ICRP)の防護体系〜
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g5.html

5月1日段階の本間先生の見解(江川さんのブログ)
『適切でない』と申し上げた」〜”子どもにも20mSv/年”問題と放射線防護学の基礎
http://www.egawashoko.com/c006/000330.html

5月19日に「放射線防御の助言に関する基本的な考え方」が公開
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan033/siryo6.pdf

この時点で、福島事故の影響が、現存被ばく状況と緊急被ばく状況が混じった状況であることが理解。
自分なりには、20K圏内と計画的避難区域と緊急時準備区域は緊急被ばく状況に該当。その他の地域で1mSv/y以上で居住が継続できる地域が現存被ばく状況であろうと推測しました。



2011年5月31日の日記

まずは1ミリシーベルトという設定数字の意味から探ります。
CRPが出した通告の 1ミリシーベルトは到達目標であり、その数値の出し方は 「自然被曝と、医療被曝を除いた外部被曝内部被曝の合算」です。 

なぜ除いてあるかというと、、 
・そもそも自然被曝が平均で2.4ミリシーベルトぐらいあること。
・医療被曝の数値は高いから。
です。

日本医学放射線学会雑誌64から抜粋ですが
■検査で受ける平均線量(mSV)
一般X線 頭部(単純) 0.1
胸部(単純) 0.4
     胃(バリウム) 3.3
X線CT 頭部 2.4
     胸部 9.1
     上腹部 12.9
     下腹部 10.5
集団検診 胃(透視) 0.6
     胸(撮影) 0.06
つまり普通に集団検診して0.66mSV
CTを何かで1回とれば、余裕で数値を超えてしまいます。

CRPは、デフォルトがかなりあることは十分承知の上で、追加分を1ミリに抑えるように努力しなさい と言っているわけです。

なぜそうなのか?というと。 「医療照射等による被曝は、個人のリスク計算の上で、利益があると判断されて選択した行為であり、事故起因の被曝は選択の余地がない被害なのだから、ミニマムに抑えましょう」ということだそうです。

さらに、避難についても、 「経済的、社会的リスクを判断したうえで、避難を選ばない場合もある」とし、その場合は現存被曝と定義して その被曝をできるだけ1ミリシーベルトに抑えるべく努力をするようにと 指示しています。 

「社会的・経済的要因を考慮にいれながら合理的に達成できる限り低く(As Low As Reasonably Achievable;ALARA)」被ばく線量を制限することが求められている。

わけです
そうしたことを考えますと、政府が 爆発後に出した20ミリシーベルトという指標は、良い値だと思うようになりました。(ただ、子供と大人を一緒にしちゃったんで、問題だったと思います)
事故直後でもあり、線量は時間経過に従って、ある程度は下がるからです。 ただし、使っていた論旨は不満だったんですけどね。

子ども達へ例えば初期の段階で10ミリとか5ミリとかいうラインが出てたら、もしかしてすんなり受け入れたかもしれないです。実際には醜悪な展開でした。 放射性感受性の高い層に対してのケアをもっと前面に打ち出していたら、はるかに社会的軋轢が少なかったろうにと思います。 今回の問題に関しては、リスクの受け方が年齢で大きく異なります。大きく異なっているのにもかかわらず同じ枠で扱うのは無理があると思うからです。 同様にヨウ素131への対応と、セシウム137への対応を明確に打ち出す必要もあって、この二つの核種の差も非常に大きいです。 現状の混乱の一つの要因は、ヨウ素131とセシウムの扱いの違いを明確に打ち出せなかった点にもあります。端的に言ってしまえば、短期決戦型のヨウ素131に対する防御と、長期緩やか型のセシウムに対する防御は、天と地ぐらいの差があります。 ヨウ素131が大量に出ている局面では、短期避難あるいは徹底した屋内退避が望ましく、長期避難を考えるのはセシウムベースで行うべきじゃないかと思うからです。

こうしたことを考えるにつけ、説明不足というか、配慮の足らない政府の方針が腹立たしくなってくるわけですが、、、

おそらく、
・短期避難(ヨウ素131対応)
高濃度なヨウ素131地域 ー 緊急一時避難を行政主体で行う。
低濃度なヨウ素131地域 ー  1〜2週間の屋内退避及び妊婦乳幼児児童の自主退避を推奨して、便宜を図る

・長期避難 (セシウム対応)
高濃度なセシウム地域 ー 計画避難 生活基盤そのものの移動
中濃度なセシウム地域 ー 妊婦幼児児童の安全確保と自主避難への便宜
低濃度なセシウム地域 − 妊婦幼児児童の安全確保

という感じの対応がきちんとした説明つきででていたら、嬉しかったように思います。。
今回の事故のタイプが、ぐずぐず継続するタイプですよね、ですから今でもヨウ素131が出ています。(ただし現状は広がってないです)

さきの対応に従って 日々のモニターがしっかりしていて、今後もし、ヨウ素131が拡散されたら速やかに対応する ということが周知されていれば、いいような気がしています。
(そのためにも、正確で広範囲な実測が欲しいです、、、、)

その後の経緯
7月19日 今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo.pdf
(緊急被ばく状況を経ずに現存被ばく状況に至っている地域がある点について言及。
緊急被ばく状況を経て現存被ばく状況に至る場合は、一旦避難なり、避難準備なりの状態をへて、その後、現存被ばく状況への移行をもって、居住の許可を与えられることになるけれど、今回の場合は、最初から居住の許可が認められている地域が広かった。最初から実質的な現存被ばく状況にあったと言える。それは、ある意味、汚染の度合いが低かったおかげだが、あとから現存被ばく状況であることを示されるという経緯をたどっている。数値的には緊急被ばく状況の参考レベルの最下限と現存被曝状況の参考レベルの上限が同じ数値であり、それを選んでいるために、矛盾は起きていない。けれども、腑に落ちない部分があったのは否めない。)


6月24日ウイーンでの発表原稿
東京電力(株)福島原子力発電所
原子力災害に対する対応
http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/07/230715-5-2.pdf
(例のラインの図がはいってる)


今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について
平成23年7月19日  原子力安全委員会
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo4.pdf

最新の放射線防護の考え方 8月26日
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/bougoWG/2/siryo3.pdf

9月30日 緊急時避難準備区域の解除
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015.html

http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-2.pdf
公示(引き続き警戒区域の公示)
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-7.pdf
その地図
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-10.pdf
解除前の地図
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-12.pdf
3月30日時点の地図
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20120330_02g.pdf

被災者へのページ
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html#shiji

11月25日 小さな変更(地点追加)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/111125c.pdf

12月26日緊急事態宣言の解除
http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/12/231226-4-1.pdf
26日時点の詳細資料
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/111226_01a.pdf

↑訂正、この12月26日の緊急事態宣言の解除は福島第2発電所の分
第一は12月16日に冷温停止状態で安定したという通達がありステップ2に入ったとのこと

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個人的に実態に一番近いのじゃないかと思われる分析↓
東日本大震災後の放射線と防護の基準をめぐる議論 井 上 佐知子
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487580_po_20110408.pdf?contentNo=1

(一般人が困惑していたと同様に、関連省庁でも翻弄されていたのではないだろうか。おそらくどの省庁がどこでどういうイニシアティブをとったらいいのかすら、決まっていなかったのではないだろうか。
ただ、現存被曝状況であるというのは、1mSv/y以上の空間線量が発生している地域ではすでに該当していて、それに対する防御策は、例えば、食品の出荷制限であるとか、水の使用禁止(一日あった)であるとか、稲わらの使用禁止であるとか、腐葉土の使用禁止であるとか、モニタリングポストの拡充であるとか、風評被害補償であるとか、様々にされている。ほとんど即座に現存被ばく状況に対応する体制が開始され、充実を続けられてきていると言える。 ので、特段に「現存被ばく状況である」という宣言が必要であったか?と問われれば、「実質的には必要はなかった」と答える気がする。宣言がされていようといなかろうと、対策は同じ。)


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その他の資料
文科省の8月31の第40回基本会議より
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/002/gijiroku/1311781.htm
国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)の国内制度等への
取入れ(現存被ばく状況関連)に係る論点整理
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/002/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/09/05/1310658_1.pdf

東日本大震災後の放射線と防護の基準をめぐる議論 井 上 佐知子
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487580_po_20110408.pdf?contentNo=1

日本原子力安全機構 柴田先生のPP
http://www.soc.nii.ac.jp/jps/2011610sympo/shibata.pdf

原子力バックエンド研究 11月
http://www.nuce-aesj.org/publishing/journal/vol18/Jnuce-Vol18-2-p71-74.pdf


平成22年放射線防護に関する考え方
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/bougoWG/11/siryo2.pdf