リンゴペクチン効能についての参照実験

リンゴペクチンによる、チェルノブイリの子ども達の臓器からのセシウム蓄積の減少効果
Reducing the 137Cs-load in the organism of “Chernobyl” children with apple-pectin
http://www.smw.ch/docs/pdf200x/2004/01/2004-01-10223.pdf

この実験の目的は、もともとのリンゴペクチンの効能が腸にくっついてきた重金属の吸着ー排出にあったので、 クリーンな食事だけを取っている場合に、有効な効果が出るか否か?を問うものでした。

方法は、サナトリウム銀のさじに滞在している64人の子供たちを二つのグループに分け
(1990年以降に生まれた子どもに限定。体内蓄積量は24〜40㏃/Kg 平均値30ベクレル/Kg)
一つのグループにはペクチンを与え、もう一つのグループには偽薬を 3週間与え続ける。

結果


ペクチン投与群
実験前蓄積平均30.06Bq/Kg 実験後蓄積平均11.25Bq/Kg 37%へ減少(減少率63%)

偽薬投与群
実験前蓄積平均30.00Bq/Kg 実験後蓄積平均25.8Bq/Kg 86%へ減少(減少率14%)


ペクチンの効用は、消化時の腸内吸着以外にも大きい。

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私見

前回の日記で 倫理的に というコメントがあったけれど、そのあたりをうまくそらした偽薬実験。
対象は 1990年以降に生まれた子ども達で、値のばらつきがない。おそらく初期の蓄積量もあまりあがってないのだと推測される。 結果を見る限り、ペクチンの有用性は顕著。問題は、被験者の選択時にバイアスがかかってないか?という点だけれど、とりあえず「効く人には効く」というレベルは証明できている。 

とはいえ、どういう機序で、体内組織内のセシウム137を排出させているのか、とても不思議。知りたい、、、、


(サマリーでは、初期の蓄積量についても言及してて興味深い。ベラルド研究所では初期に16万人の人達の内部被曝値を 移動車両で計測していた。
the 137Cs levels of 70 to 90% of the children of these regions exceeded 15–20 Bq/kg bodyweight (BW). In many villages the 137Cs levels reached 200–400Bq/kg BW, the highest values being measured in the Narovlya district with 6700–7300 Bq/kg BW.

ほとんどのエリアで15–20 Bq/kg。 農村で 200–400Bq/kg BW 最高値 6700–7300 Bq/kg BW.
これは体重30kで掛けてみると、通常600のところ、 6000から1200 最高値で201000−219000 ということになる。 20万㏃の蓄積は、10歳の子どもの場合毎日の経口1べくれるあたり60の均衡点が形成されるので、 最高値付近では毎日3333ベクレルの摂取を1年以上続けていたことになる。 

ちなみに 1ベクレルの継続摂取による均衡量は
1歳 32ベクレル
9歳 60ベクレル
30歳 120ベクレル
50歳 140ベクレル

これは推測可能な範囲だろうか?と考えると、次の資料からわりとリーズナブルに可能。

IAEAのPresent and future environmental impact of the Chernobyl accidentから
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/te_1240_prn.pdf
TABLE VI. TEMPORARY PERMISSIBLE LEVELS (TPLs) FOR CAESIUM
RADIONUCLIDES IN DRINKING WATER AND FOOD PRODUCTS
BELARUS REGULATIONS, 1992
正確には「規制可能値」つまりこれ以下を指定しても無理だった値。
水が18.5 ミルクが111 肉で600 パンが185  ジャガイモが370 乾燥きのこが3700

Fig. 10. Distribution of Ukrainian settlements according to mean 137Cs concentration in
locally produced milk in 1992–1994.
ミルクの分布のトップは 8ベクレル/kGの位置にきてるが、256ベクレル付近までは数値的に無視できない程度に存在しているのがみてとれる。


ただ、福島の場合を考えるには、 チェルノブイリのほとんどのエリアで15–20 Bq/kg の蓄積に収まっていたことが重要で、今回のフォールアウトの比較と、日本の市場希釈の良さから考えても、おそらく同じ付近かそれ以下になるんじゃないかと思う。

その場合、30kの体重の子どもを考えてみると、
30×15=450ベクレル   30×20=600ベクレル
450〜600ベクレルの蓄積量

になると思うし、それに到達する一日の経口量は、7.5〜10ベクレルとなる。
実際の蓄積が20 Bq/kg以下ですむなら、ベラルーシのどの基準にあてはめても大丈夫なラインではあるので、あまり心配する必要はないかもしれないなあとちょっと思った。

まあでも、あまり気を抜かないでほしいし、なにより、規制可能値を厳しく設定していたという事情もある。(とりあえず現在の暫定基準値は負けてるし) おそらく日本でも無理なく設定できるレベルだと思うので、安全のためにも規制値を下げておいてほしいです。