香港製文学の挑戦

JanJan】【香港IPS=アントアネタ・ベツロヴァ、12月20日】2007/12/29

 最近、文学の新しい発信基地としての香港に注目が集まっている。
これまでは、英語圏の大出版社が世界の出版市場を取り仕切り、非英語圏の作家が世界でデビューすることは容易ではなかった。香港の作家Xu Xiは、「編集者たちは文学を発展させようとはしていない。代わりに彼らがやっていることは、利益を生み出す『スター』となる本(スター作家ではなく)を探すことだ」と嘆く。
彼女が「書籍のマクドナルド化」と呼ぶこの状況の中では、彼女の本が英語圏で世に出ることは難しい。彼女の作品は生身の香港のトゲのある部分を描いており、「エキゾチックな東方」という西洋のステレオタイプなアジア観にフィットしないのだ。
英語で作品を書くXu Xiはまだましな方かもしれない。Erica Liは、『謎の谷』(写真)というファンタジー3部作を発表しているが、自由の欠如、愛の抑圧、封建的な結婚といった中国観に合わないためにやはり英訳での出版が難しくなっている。
しかし、このところ、英国の元植民地として英語を使い、中国本土にも近い香港が文学の「ハブ」として登場してきている。
再刊された『アジア文学レビュー』の第5号では、マレーシアのTan Twan Engからインドネシアの詩人Laksmi Pamuntjak、シンガポールのCyril Wongに至るまでさまざまなアジアの作家が取り上げられている。
イギリスの出版社「ペンギン」の中国マネージャーであるジョー・ラスビー氏は「英語圏の読者はアジアのオリジナル作品を以前にも増して求めるようになってきている」と語る。ペンギン社では、来年早々、中国でベストセラーになったJiang Rongの『狼のトーテム』を発売する予定だ。これは、アジア文学が英語圏で成功するかどうかの試金石だと見られている。
また、イギリスで有名な「ブッカー賞」を主催している投資会社「マン・グループ」は、香港で「マン・アジア文学賞」を創設した。11月には先ほどの『狼のトーテム』が第1回目の受賞作品となっている。
英語圏におけるアジア文学の行く末について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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(IPSJapan)
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