高村光太郎「道程」の原稿、全国初公開

asahi.com】2007年05月05日
 詩人で彫刻家の高村光太郎(1883〜1956)の詩集「道程」の原稿が、山梨県立文学館(甲府市貢川1丁目)で開催中の企画展「高村光太郎 いのちと愛の軌跡」で全国で初めて公開された。
 「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ父よ 僕を一人立ちさせた広大な父よ」  
こんな出だしで有名な「道程」は、高村の第1詩集として知られる。1914(大正3)年10月、高村が31歳の時に発刊された。詩75編などを収め、渡米後、新しい自我に目覚め、激しく揺れ動く感情などを詩で表現している。
今回展示されるのは、ざっと100枚あるうちの38枚分の原稿。「ああ自然よ父よ」の下りでは、いったんは「父よ」という表現が消された形跡がうかがえるなど、「高村の創作活動の課程の一端を垣間見ることができる」(同館)という。  「道程」の原稿は、詩集を発刊した出版社の経営者が保管していたともされていたが、実際は長年行方がわからなくなっていた。98年に所有者が見つかったことが報道され、存在が明らかとなったが、一般に公開されることはなかった。  そこで同館は昨年夏ごろ、企画展の「目玉」として、原稿の展示を思いついた。以来、手紙をやりとりするなど交渉を続け、今年1月に所有者から公開の許可を得たという。  企画展では、そのほかにも高村に私淑した山梨出身の詩人・野沢一(1904〜1945)と、高村が交わした書簡なども公開される。同館の保坂雅子学芸員は「『道程』は高村の代表作の一つ。その実物の原稿を多くの方に見てもらいたい」と話している。
 同展は6月24日(月曜日休館)まで開かれる。開館時間は午前9時半〜午後5時。問い合わせは同館(055・235・8080)へ。
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