たつのの詩人金田弘さん 奈良を思う詩集を出版

神戸新聞】2007/03/22
たつの市揖保川町の詩人、金田(かなだ)弘さん(85)が詩集「青衣の女人」を出版した。一九六三年から二〇〇六年にかけて書きためた奈良にまつわる十八編を収録している。
いにしえの奈良の都を愛した恩師、會津(あいづ)八一(やいち)(一八八一-一九五六年)への感謝の思いを込めている。(神谷千晶)
 金田さんは同市龍野町に生まれた。著書に詩集「ナラ」「邪鬼(まがつみ)」、
回想記「旅人つひにかへらず」「會津八一の眼光」などがある。一九九五年には、県文化賞を受賞した。 會津八一には早稲田大文学部で師事し、東洋美術史を学んだ。會津は優れた美術史家であるとともに歌人、書家でもあり、金田さんは、詩人の西脇順三郎(一八九四-一九八二年)と並ぶ師として仰ぎ続けてきた。
 詩集のタイトル「青衣の女人」は、収めた十八編のうち一番気に入っている詩からとった。青衣の女人は、東大寺の修二会(しゅにえ)で朗読される過去帳に登場する名前だ。
鎌倉時代、僧が過去帳を読み上げていると青い衣の女性が現れ「なぜ、私の名を読み落としたのか」と尋ねる。僧がとっさに「青衣の女人」と言うと姿を消したという。

 〈突然ひときわ沈んだ声が長く尾を引いた/「しょうえのにょにん-」/竹笛の音の/疾走する矢のように失われていく女の/色の消滅/-わたしはもういないのよ-〉(「青衣の女人」)

「世界の消滅」という観念の世界を巧みに表現した。
それ以上でもそれ以下でもない言葉の断片、断章を素材として掛け合わせた詩の中に,時折ふと會津が姿を見せる。

菩提樹(ぼだいじゅ)の実が落ちていた/その一つを拾い/ポケットに入れた/何者か肩怒らせて/土塀の中へ消えていった/八一/か〉(「秋の終りの」)

 金田さんは「會津は学を極めることで奈良の世界へ入り込み、その内部から歌を詠んだ。僕が奈良を思う時、やはり會津が存在する」と話す。 湯川書房刊、三千円。
ttp://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000277248.shtml

#詩を書くことに年齢はないなあと思う記事でした。是非読んでみたいと思います。