「廃棄を待つ街」初稿

聖家族教会スレッドに投稿 梁山泊 お題 ゴミ 用の習作

157 :名前はいらない :2007/01/23(火) 18:33:02 id:QH6W8v7N
ニュータウンの整った町並みの中
幼い子供たちの遊ぶ姿は 
窓辺を飾る白いレースと花だった
必要不可欠な期待値を満たすなにものか?

人気が失せたゴーストタウンには猫もいない
時折現れる人も、何かにせきたてられるように通り過ぎて
過去の希望が焼け焦げてしまった残骸に
気づかないふりをする



158 :名前はいらない :2007/01/23(火) 18:42:15 id:QH6W8v7N
つぶれたペットボトルが
風に吹かれてすべっていった

きれいに整えられた「郊外の一戸建て」に住む女は
居間の椅子を満たす誰もいないのに
パンの造花を作り続けている
いつか誰かがソレを見て「ほんとうにきれいね」と言ってくれるのを
夢みているのだ





159 :名前はいらない :2007/01/23(火) 18:51:35 id:QH6W8v7N
とある日の笑いがしみこんだテーブルは
もっと笑いが欲しいと蒼ざめていく
落書きを書きなぐられては消され、消されてはまた書かれていたコンクリート壁も
もはや書く人も消す人もいないままに黒ずんでいく
白墨石で円を書いた駐車場のアスファルト
猫が子を産んだ軒下のアロエ
いたずらに生い茂ってしまった楡の木の影が長く射す
あの楡を大事に残そうと、ビラを配っていた男も
とうの昔に死んでしまった

時が容赦なく爪跡を残して通り過ぎ
追いつく力のない住人が
背中にその爪をひりひりと感じながら
どうしようもなく、とりかえしのつかない日がくるのを待っているのだ


160 :名前はいらない :2007/01/23(火) 18:57:33 id:QH6W8v7N
指の間から零れていくなにものかに
悦ばしげに酔いつぶれ
醗酵した塩の柱になって錆び落ちていく さびおちて いく