チェルノブイリの子ども達のセシウムの蓄積量と心血管の徴候と食事の関係

  • 予備的考察:リンゴペクチンの経口摂取後の観察

G. S. Bandazhevskaya, V. B. Nesterenko, V. I. Babenko, I. V. Babenko, T. V. Yerkovich, Y. I. Bandazhevsky
Institute of Radiation Safety Belrad, Minsk, Republic of Belarus
http://tchernobyl.verites.free.fr/sciences/smw-Galina%20Bandazhevskaya.pdf

実験の実施時期が不明なのですが、この論文は子ども達をセシウムの体内蓄積量別にグループ分けし、セシウム蓄積濃度と、食事と、心血管の異常との関連を示しています。  セシウム蓄積量の閾値を考えるにあたって、参考になる文献になるかと思われたので、検証を試みました。




サマリー
チェルノブイリでの原子力事故から17年、ベラルーシ南部のほとんどの人は、長期にわたって崩壊を続ける放射性物質の影響にさらされ続けてきました。 この地域の子ども達に見られるセシウム137の汚染は彼らの食事、特に私営農場で生産されたミルクによって影響されたものと説明されています。
我々は、ベラルーシの田園エリア(セシウム137の残存量が >5 Ci/km2の地域)の子ども達をセシウムの蓄積量によって、3つのグループに分けて(1:体重比で5ベクレル/kg以下、2:38.4 ± 2.4 Bq/kg 3:122 ± 18.5 Bq/kg)観察を行いました。
結論は、子ども達のセシウム137の蓄積量と摂取食品と心血管の徴候との関係を決定できました。
 心血管の徴候、心電図の異常値および主要な高血圧症はセシウム137濃度の高い子どもたちのほうに低い子ども達よりも頻繁に現れました。
 セシウム濃度中間と高いグループ(グループ2と3)の子ども達には、リンゴペクチンを食事に添えて16日間摂取してもらいました。リンゴペクチンは明らかにセシウム蓄積を減少させています。(39%と28%の効果が期待できます)心電図の異常は改善されましたが、どのグループにおいても心血管での徴候と血圧傾向については、変化がみられませんでした。
はじめに
チェルノブイリ事故から17年が経過し、ベラルーシ南部の人工の放射線量の60%から80%は、長期崩壊型の核種の崩壊によってもたらされてきました。このエリアでの子ども達の間に広がったセシウム137の蓄積は、食料ーとくに私営農場によるミルクによるものとみなされています。
 セシウム137はおもに内分泌腺、膵臓、胸腺および心臓に溜まります。これらの臓器の子ども達における蓄積は、他の臓器の10倍から100倍のレベルで検出されました。(注1参照文献ー剖検の論文)
セシウム137はγ線に加えて、周辺数ミリの範囲の細胞に大きな影響を及ぼすβ線を放出します。 γ線の計測によって、体全体でのセシウム137の蓄積状況を知ることができます。チェルノブイリ汚染地区の子ども達は、それ以外の地域の子ども達より、より慢性的で、重い症状に苦しめられてきました。内分泌障害や白内障と同じく、呼吸器障害や胃腸の伝染病もよく見られます。他にも、疲労感や無気力感の増加や、心血管の異常(不安定な血圧や高血圧症)を伴った胸の痛みもしばしば散見されます。
心電図による 洞性不整脈、再分極、および伝導異常を示している心電図異常は、高い値でセシウム137を体内中に取り込んでいる子供において頻繁に見えます。[注2http://www.smw.ch/docs/pdf200x/2003/35/smw-10226.PDF   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18327657]ゴメル地方において行われた死亡後の解剖によって、心臓病とそれに伴う急死は心臓筋の高い値の体内中セシウムと大きな関係性があることを明かしています。組織学研究は、 小規模の炎症や管の変異しか伴わない間質浮腫心筋細胞の変性変異と巣状壊死を明らかにしました。 同様の心筋障害はセシウム137に被爆していたネズミで実験的に引き起こされました。現在、偶然に体内に取り込まれた、セシウムなどの放射性物質を減少させるための化学物質に関する研究が大きな注目を浴びています。FDAは薬物産業界にフェロシアン化物 (プルシアンブルー)と言われるセシウムを体外排出する薬の開発を精力的に奨励してきたことで知られています。 この薬はチェルノブイリ地域においても家畜のえさに混ぜることによってミルク中のセシウム濃度を減少させる目的で使用されてきました。

ペクチンは様々な果物や根などに含まれる多糖類の中の一種です。アップルペクチンは、ゼリーやジャムなどを作るときに広く用いられています。 調査において純度のペクチン錠剤を放射性重金属のダメージからの治療に使用しました。放射性物質に汚染された食事を与えられていたモルモットを用いた実験では、 アップルペクチンを飲ませることによって、 ストロンチウム90とセシウムが体内に吸収されることを防ぎました。重金属の影響下にある人体にアップルペクチン飲ませることは安全であるということは、 グレス博士他の研究によっても証明されています。
(以下はアップルペクチンは有効だよという話なので省略します)

被験者と、研究手順
この研究はSvetlogorskのSilver Springというサナトリウムで行われました。ここでは大体900人のゴメリ地区の放射能汚染地に住む子ども達が3週間ほどの休暇を過ごすためにやってきます。 ベラルド放射線防御協会の技師が子ども達のセシウム蓄積量を正式な方法(遮蔽タイプ3M)で測ります。
 すべての子ども達と保護者及び、付き添い人は、この試みについて説明を受けています。 子ども達は母親の了解をあらかじめ書面でもらってきています。
 子ども達は、最初に測ったセシウム137の蓄積量に応じて、3つのグループに分けられました。 全員で94名(男子46名、女子48名) 7歳から17歳の参加することを自ら志願してきた子ども達です。 セシウム量別の内訳は表1を参照してください。
グループ2(中間セシウム137量、平均38.4偏差±2.4ベクレル/kg体重比)の31人、とグループ3(ハイレベル量 へ筋122偏差±18.5ベクレル/Kg)の30名は 毎日2回16日間、5gのリンゴペクチンパウダーを水か牛乳と一緒に、食事と共に提供されました。

アセスメント
 この研究の開始と最終時点でセシウム137蓄積量が計測されています。セシウム137摂取の傾向をあきらかにするために、各々の子ども達に、普段の食習慣と、食品の提供元を記入してもらいました、 研究の始めと終わりには小児科医の診察を行っています。診察の公平性を確保するために、小児科医には子ども達のセシウム蓄積量を知らせていません。同じく始めと終わりに、心電図が取られ、問診を受けてもらい、動脈の血圧を適切な運動8(ひざの屈伸運動)のあとに測りました。

統計分析
子ども達のグループ間の比較のために、t-テストが使われました。
結果
☆基本的なセシウム137蓄積量と、食品の出荷元との関係
グループ間のセシウム蓄積量の違いは、少なくとも一部は食品の出荷元から説明できます。 表1 私的に生産された食品を食べていた子ども達の割合は、統計的に明らかにグループ1では他のグループより低かったのです (p <0.05)。

セシウム137の蓄積におけるペクチンの降下
グラフ1は、16日間のペクチン摂取前と摂取後のセシウム蓄積量減少の平均です。
中間グループ2では39%、高セシウムグループ3では28%が減少しました。
どちらのグループでも最低値の減少は統計的に有意です。(p <0.05)

☆自覚症状の訴え
多くの子ども達からは自覚症状の訴えがありました。胸の痛み、頭痛、だるさ、いらいら感、鼻血です。 表2で示しているように、こうした自覚症状は、グループ1では1-人(30%) グループ2では12人(39%) グループ3では19人(63%)になります。そして、グループ3の10人(30%)の子ども達は、慢性的な疲労感と鬱症状も訴えていました。 サナトリウムでの滞在の最後には、そうした訴えがなくなっています。

☆心血管
スタート時には、異常な心音がありました。 グループ1で16人(48%)、グループ2で26人(84%) グループ3で27人(90%) (表2)グループ1と残りの2グループとの差は、統計的に有意です。 高血圧な子の人数(20 mm Hg以上)はグループ1で3人(9%)グループ2で8人(26%)グループ3で15人(50%)となります。表3。
グループ1とその他の差は統計的に有意です。 高血圧症は、グループ3の10%の子ども達にみられました、(グラフ2) 
この観察を経ても、血圧異常の子ども達の率は変化がありませんでした。

☆心電図
研究の最初に、心電図をとり、異常があったのは、グループ1で17人(52%)グループ2で26人(84%)グループ3で29人(93%)です。グループ1とその他との差は有意です。
 9人の子ども達(グループ1の6人、グループ2の2人、グループ3の1人)は2回目の心電図を拒否しました。ペクチンを与えられていなかったグループ1での、最終的な心電図での異常の率は変化ありません(きちんとした食事とビタミンはもちろん摂っています) 。グループ2と3では、心電図出の異常率は若干下がりました。したがって、ペクチンを与えられたグループでの変化は有意です。

☆信頼性
ペクチンは有効です (意訳)

議論
(省略、研究結果と同じです)。心血管の異常は統計的に、セシウム濃度と相関関係にあるのだけれど、なぜそうなるのかはわかっていません。

ちょっと最後をはしょってしまいましたが、こんな論文でした。

参考になる実験アドレス
naka-takeさんが紹介してくれた論文(バンダジェフスキー セシウムの心筋への影響)
http://radionucleide.free.fr/Stresseurs/Radioactive_caesium_and_heart_eng.pdf

前に検討していた、剖検関連の論文↓

「慢性的なCs - 137の子供の臓器での取り込み」 Chronic Cs-137 incorporation in children’s organs
http://3351517478758102550-a-1802744773732722657-s-sites.googlegroups.com/site/psrippnwschweizredesign/dossiers/03_Chronic_Cs137_incorporation_in_childrens_organs.pdf?attachauth=ANoY7cqcMqcFFhT5ceJGJpXkFWOJ63wNCZjmPiAXng2r79Js22GaiXu0fEIABACQwQHNe7l0YpscMOFRdXm2p2sja5yEU9LgUu2MtCj7hkkw_AhltNkI8LHk9PVpBrXTldJqR1hSMbN9_ci9WA8ZAz3tEbFy3HOgRF-lFn5g9iVS8pJsQmRKFJX-fACASxjIVaGYQeRXe9cEu__9mgMzBr-pKMB5NEbWl5z4ZEGdJKYnbK-49fePojvRrCqFnrtTCBMGElr9c3D25q6oCNUvGnyfKZIT7EWnyQ%3D%3D&attredirects=0

(この論文には、「妊婦の血液中のセシウムは基本的には胎盤を通過しないが、セシウム血中濃度100ベクレル/Kgを超えると、胎盤通過が起きはじめる」 と書いてありました。)
http://radionucleide.free.fr/Chapitre_1.htm 

ラットでの実験論文
http://www.irsn.fr/EN/Research/publications-documentation/Aktis/envirhom/ingestion/Pages/Cs_radiotox.aspx
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18327657



以下ミクシ上での議論です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

B 2011年09月09日 08:16
りんごペクチンを食べた量をゼロ入れて三水準とり、5パーセントの多重検定で、全部有意なら、りんごってやっぱ有効なのかもしれないですね。
試験区間の年齢や性比に偏りがないことは、検定前に当然やってるでしょうけど、ぱっと見でも偏ってなさそうなんですよね?
※血管の話じゃなくて失礼。

リーフレイン 2011年09月09日 08:19
まあ、この論文のメインはリンゴペクチンですもんね。 そういう読みは正しいです。
被験者の年齢性別には偏りないですよ。 
つかまあ、これ読んだだけで、小僧どもは 「体重比20ベクレル以下に抑えるぞ」って気になっちゃいますよ。
あいつら重いんで70Kとして、 1400ベクレルまで。というと経口摂取 10ベクレルですわ〜〜〜 ドラフト111の推奨値ばっちりです。。

らぶちん 2011年09月09日 08:22
心筋の異常に関して。
父の病気の時に説明を医師から受けたんだけれど、いろんな要因があるとのこと。
で、今調べているんだけれど、低マグネシウム血症もあるんだねー。
http://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/hypomagnesemia.htm
前にリンゴペクチンを考えていたときに、あれって腸で選択性を持たずにミネラル分の腸の吸収阻害をして排泄させちゃうってことなんだよねー。(かなり大雑把だけれど)
なので、論文中でこのようにセシウム以外での要因を排除してから分析しているのか?
と言う点が疑問です。
この人の論文、私はペクチン効くの?から入っていて、読めば読むほど違和感が出てきちゃったの〜。
一日1個のリンゴ食べる生活は昔から良いと言われているし、そのくらいなら納得なんだけれど、わざわざタブレットペクチンを取るのは逆に害があるのかな?と思い始めてきたよ〜。

リーフレイン2011年09月09日 08:25
ペクチンに関しては、多分ね、ペクチン会社から研究費が出てて、そこを強調しないといけなかったんじゃないかな?って思います。 その辺を差し引いて、数値だけ追ってけばいいんじゃないのかな? 
はっきりいって、この論文で、重要なのは、「実験前の数値」に尽きる気がする。

らぶちん2011年09月09日 08:46
それと不思議なのが、セシウム内部被曝ってセラフィールドでもスリーマイルでも存在していたdしょ。で、CINIC系列は白血病との関連性のみにフォーカスしているんだよね〜。http://cnic.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=35 CNICで心筋に言及しているモノってあるのかな?
確かに、実験前の数値と、あとは母数だよね〜。
死体も全部をデーター内にブチ込んでいるのか?(汚染されていない可能性があるものも含めているのかなぁという疑念あります)

リーフレイン 2011年09月09日 08:53
セラフィールドかあ、、、ううむ、、、あれはなんか微妙だよねえ。 疫学的には無効っていう話が定説っぽいし、、、(だけどドラフト111には入ってたなあ) 
死体ははいってないよ今回は生きてる子ども達だから。母数は大事。 
健康な子ども達でのセシウム蓄積量もみたいよね。

ani 2011年09月09日 14:14
ペクチンの件は、もうウクライナが貧しくなりすぎて、りんごが効くという知見があったものの、りんごジュースとして出荷していたりんご、残りのゴミである皮しか無かった。それで皮に含まれてる成分が効くかどうか調べたかった。
ということからリンゴペクチンの決め打ちになったはず。同時にスピルリナなども試験しているけど、海があればあんなに安いスピルリナも、効くけど高いからという結論を出して却下になっているから。
ベルラドは交通事故で暗殺されかけても健康被害を告発した研究所だから、健康食品会社と結託みたいな書き方で誹謗中傷してる人がいるけど、とんでもない誹謗中傷ですから、まあその点、記載には気を付けてあげて欲しい気がします。

リーフレイン 2011年09月09日 14:37
aniさん
ベルラドについてはよく知らないのに書いてしまってすいません。 了解しました。

らぶちん 2011年09月09日 16:59
なんだかやっぱり正論が一番説得力があると思い始めてきた。
セシウムも、化学的毒性は慢性と言う点では知見無しだし。
http://www.furuchi.co.jp/info/MSDS_pdf/Cs_1.pdf
あとは放射線による細胞への影響だけれど、液体中にあってかつ崩壊がまばらな濃度なので
確実にぐさっと攻撃を与えるだけの濃度って、かなり濃いときがありかつ、それから病変にいたる時間も考慮しなきゃいけないし、論文が評価されていないのは抜けがあるってことなのかなぁと思った。
ラットをまだ読んでいないので、考えが変わるかも〜。
おまけ
http://yokohama-konan.info/wp-content/uploads/2011/09/yokohama_koho.jpg
すごくわかりやすいと思ったよ。

リーフレイン 2011年09月09日 17:17
いやだから20とか30ベクレル/kgなら、化学毒性が意味をもつほど量はないって。同様に、組織の直の損傷というレベルでも、さほどじゃない、 で、今気にしてるのは、実際にこの子たちのデータが事実で、統計的な落とし穴でもなかったとすると、放射性セシウムと心臓関係の動きの阻害には関係があるじゃない。
上の2つの原因じゃないとするなら、他の原因があるんじゃないか?って話よ。

らぶちん2011年09月09日 18:23
雑談板のほうをぜんぜん見ていなかったので、ズレコメントでごめんね〜。
放射性ではないセシウムの心臓に対する影響って文献を読んでみます〜。
心筋梗塞系だと、いろんな元素の影響が無視できないんじゃないか?と考えています。
小さいレベルで申し訳ないんだけれど、親の心筋梗塞のときにお医者さんにイロイロ質問したんだ〜。
で、カルシウムやマグネシウムなども関係してくるように思えています。

B 2011年09月09日 21:49
偽相関かもしれないってことは、論文評価では常に大事なポイントですけど、実用的には偽相関でも意味がある場合もあるかと。
偽相関であるってことは、「形式上相関を示すが因果関係はない」ってことですよね。ポイントとしてデカイです。
でもそれって逆も言えて、因果関係なくても、結果オーライじゃん、とも言える場合もありうるのではないでしょうか。
この場合、下剤のマイルドなやつの代わりにりんごジャム食べるのも、それで結果的に体内放射能が減るなら、いいかな、みたいな。

リーフレイン2011年09月09日 21:57
らぶちんさん
そうだなあ、、、ダイナミックに動くところだものねえ、、、
過去の負荷分も半端ないしねえ、、、、悩ましい、、、、
Bさん 結果オーライありですね、。 リンゴジャムにします

naka-take

んーっと、ちょっと今日はあまり時間が取れないので、少しだけコメントさせてください。
Twitterでそのバンダジェフスキーの論文が話題に上がっていて、
http://twitter.com/#!/kimitakatajimi
の方が、
http://radionucleide.free.fr/Stresseurs/Radioactive_caesium_and_heart_eng.pdf
の論文は、基本的に放射性セシウムではなく、セシウム自体の影響を見ている、という話をされていました。

セシウムは昔から心拍に影響を与えることは知られています。
http://circ.ahajournals.org/content/77/5/1149.full.pdf
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/ComplementaryandAlternativeMedicine/HerbsVitaminsandMinerals/cesium-chloride

ここら辺が答えになるのでは?
詳細についてはまた追ってレスさせて下さい。

Elysha
>リーフレインさん
ECGの詳細の記載が無いのではっきりいえないんですが、高カリウム血症を疑う所見はなかったのだろうと思うわけです。
洞性不整脈、再分極に伝導異常、ということで。
naka-take さんが示してくださった論文で、塩化セシウム投与で心室不整脈を起こしています。
量的な比較をしたいですが、この週末はちょっと無理かも、です。


リーフレイン
正直、関連要素がありすぎて、頭が混乱してしまうんですが、こう、物理的な量として、カリウムイオンポンプを占領しちゃってとか、ミトコンドリア膜を破壊してとか、そういう直な阻害部分というのは、有意な量になるとはちょっと思えないんですよ。崩壊時になにかを誘導してしまって、一回の崩壊で大きく被害が広がる、とかいう話があると、納得しやすい。。。その活性酵素の部分がそうなのかな? しかしこちらを見ると、単純に伝導異常で説明しちゃう とかクリアーな状態じゃないですね、、、

Elysha
いろいろ関連付けて書かれていますが、推論の域なのか事実なのかがはっきりしていません。CPKも血中濃度は測定できるはずですがどうだったのか記載はないですね。
人で実験するわけにはいかないので動物実験で追試されてるようですが、IRSNの方にも放射性セシウム投与で心筋逸脱酵素が上昇した、とあったと思います。けれども形態学的な変化や蓄積はなく、影響については微妙、と書いていましたね。

リーフレイン
ただ、30ベクレル/kg濃度を超えた子ども達で、被害があがっているという報告があって、統計的にも正しいのなら、 我々も体重比30ベクレル/kg未満に蓄積を抑えたいと正直思いました。 (それがどういう経過で引き起こされたかには関係なく、引き起こされた事象であるわけだから)

Elysha
>リーフレインさん
そうですね、論文を検証するのも面白いですが、実際どのような食事で蓄積したのか、現状の日本ではどのくらいの蓄積が予想されるか検討する方が重要と思います。
全訳してくださった論文で(タイトルからもちょっと抜けていましたけれど)、
検査対象の子供たちは一番蓄積の少ない群でも半数以上、もっとも多い群では100%、privately produced food を食べているという表がありました。
それらの食品のセシウム値が気になるところです。

リーフレイン
>Elyshaさん
http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pdf
P99 にミルクの比較があります。1990年で国営農場 200ベクレル、私営農場1000ベクレルぐらいです。
グラフでは1993年に劇的に下がっています(ちょうど、ソ連の分割があったあたりかな?)
一日1L仮に飲むとすると(もう少し少ないのかな?) 1000ベクレルの摂取になります。
たった一か月で18000ベクレルの蓄積ができあがります、均衡点は140000ベクレル。1995年か1996年ごろの実験として、そのころまでに蓄積量が収まったとしても、過去の負荷分は物凄かったでしょうねえ。
あ、訂正、均衡点は25000ベクレルぐらいですね半減期13日の1歳児で計算すると、(排出が速いですね、、)

naka-take
リーフレイン さん
30ベクレル/kg濃度を超えた子ども達

これが本当に原因といえるのか、がまだまだ曖昧だとおもいます。
長靴を履いたら風邪をひいた、くらい遠いかと。


さて、順番にいきますが、
http://www.smw.ch/docs/pdf200x/2004/49/smw-10219.pdf
は、まず観測者はバンダジェフスキー氏の奥さん(小児科医)ですし、ペクチンを人体に投入して実験検証をして、(ある程度のランクの)論文にしているのは、この研究所しかない、という状況であることには注意が必要です。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=pectin%20cesium
ネステレンコ氏も同様ですね。

>607
>心電図による 洞性不整脈、再分極、および伝導異常を示している心電図異常は、高い値でセシウム137を体内中に取り込んでいる子供において頻繁に見えます。[注2 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18327657]

リンク先を見てみましたが、これはラットでの実験です。
体内蓄積量が500Bq/kgになるように、6500Bq/Lのセシウム137が含まれる水を飲ませて3ヶ月間実験したものです。150Bq/dくらいの取り込みになる計算。
この条件下では、血圧の低下は認められましたが、心拍には影響が出ませんでした。
ECGのパターンも変化なし。不整脈も観測されませんでした。RT-&ST-intervalsは有意な低下が見られましたが、QRS-complex or other intervals, namely PQ, PR, QT and RR-intervalsには変化がありませんでした。

これらの結果から、このリンクの筆者らは、
chronic 137Cs ingestion at low concentrations has no significant effect on body
weight, water consumption, or food intake [11, 27] nor does it affect locomotor activity [8]. Our results here confirmed those findings and thus do not agree with those of Bandazhevsky, who reports increased fatigue or apathy associated with cardiovascular symptoms in children who have lived in contaminated areas of Belarus since the Chernobyl explosion [25].
といっております。

膜電位に関しても
Since cesium competes with potassium (K) for membrane transport [28], a similar process with 137Cs has been hypothesized [16], but our model found no modifications in plasma K+ levels.
とあります。

(いっそのこと、Discussionをそのままコピぺしようという気持ちをぐっとこらえてw)

基本的に、ラットでの実験は、バンダジェフスキー氏の知見とさっぱり一致しない模様(これは前に検討していた、剖検関連の論文のことです)。
Surprisingly, plasma biochemical markers CK and CKMB, which are related to cardiovascular diseases, rose significantly after 3 months of 137Cs contamination. In contrast, Bandazhevsky [17] reported decreased levels of CK and alkaline phosphatase in rats contaminated by 137Cs through food.

この筆者らは、バンダジェフスキー氏の論文と結果が乖離する理由を以下のように説明してます
Growing evidence suggests a strong link between thyroid dysfunction and heart disease due to the effects of thyroid hormone on cardiac contractile function and cardiovascular hemodynamics [30, 31]. Thyroid cancer rates increased were reported after the Chernobyl nuclear accident, most probably due to radiation exposure [4, 20–22, 32]. Nevertheless, total plasma levels of thyroid hormones T3 and T4 did not change in our rat model after 3 months of 137Cs exposure.

つまり、甲状腺ホルモンの異常が、間接的に心臓疾患を引き起こしていたのではないか、という指摘です。

この筆者らはバンダジェフスキー氏の2004年の「心疾患とペクチン論文」を引用して、実際に心疾患が観察されているのだが、ラットを用いた実験では再現できない、更なる検証が必要、と結んでいます。

@リーフレイン さんは何故これを注2としてリファしたのかが、ちょっと把握できていません、元論文はBandazhevsky YI, Lelevich VV. Clinical and experimental aspects of the effect of incorporated radionuclides upon the organism.Belarus (UDC 616–092:612.014.481/.482) Gomel 1995; p.128.を引いてますよね?
これはウェブ上で見つけることができませんでした。

で、同じ>607の次のリンクについてですが、
http://www.irsn.fr/EN/Research/publications-documentation/Aktis/envirhom/ingestion/Pages/Cs_cardio.aspx
フランス政府のこれは、
「To conclude, the few studies carried out on the effects of internal contamination with caesium 137 are inconclusive as regards any possible increase risk of cardiovascular diseases following the ingestion of this radionuclide. 」
です。心疾患と放射性セシウムを結びつけるには論拠不十分だ、ですね。

これもなんでこの文脈にリンクが置かれているのか、良く分かりません。

>612の指摘が意味不明です。
フランス政府HPの図は、説明したhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18327657にある図です。心電図は異常が見られていません。血圧は下がっています。
血圧の低下は、実際のチェルノブイリのデータと逆です。筆者らは精神的ストレスによる血圧上昇作用のほうが大きかったのだろう、と考察しています。

あと、非放射性セシウムカチオンとしての作用は、15 pM in the drinking waterなので、低すぎて効果は出ない、としています。

さらに、他のところからの発表で、ラットで行ったペクチンとプルシアンブルーの効果の比較検証実験があります。
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=MImg&_imagekey=B6VRJ-4M0J34F-1-7&_cdi=6236&_user=10843&_pii=S0300908406002069&_origin=&_coverDate=11%2F30%2F2006&_sk=999119988&view=c&wchp=dGLzVzz-zSkzk&md5=1b127dcb5bdc3927d5c1c7e7f7c21d02&ie=/sdarticle.pdf(これは落とせないかも・・・)

http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110716#1310774141
の論文です。
結果は上で説明した論文同様、「ラットではペクチンは効果なし」です。

総じて、「ベラルーシの研究所以外で、ペクチンの効果を(まっとうそうな)データとして出している人はいない」という状態です。

で、他の国の人が検証しようにも、非常に難しい状況で、動物実験ではきれいにネガティブな結果です。

そして、低線量の被曝が心疾患を起こす作用機序が不明で、バンダジェフスキー自身もきちんと説明できていません。

論理的な裏づけができず、第三者からも追証されていない、というのは学説としてかなり弱いのです。論理的な裏づけができないと、「ああ、それはありそうだな、俺らもいっちょ検証するか」と他の学者の動機付けができないので、検証されることすら少なくなりす。そうすると、やがて論文として引用されなくなり、数多ある他の学説の中に埋もれてゆき、いずれ淘汰されてしまいます。

科学的な通説というのは、多くの人に「まぁ妥当だな」と理解されるものです。
セシウム137で心疾患が起きる、というのも、ペクチンが血中に入ったセシウムを排出する効果がある、というのも、今のところ「まじっすか?」レベルです。

誤解の無いように、ですが、彼らが嘘をついている、という事を言うつもりはありません。ただ単純に、フランス政府や多くの研究者から信頼されていないだけです。

ちょっとここらで一旦切りますね。
本文についてはまた後ほど。

naka-take
>618 Elyshaさん
先に示した
http://circ.ahajournals.org/content/77/5/1149.full.pdf
では、実験対象が犬で、cesium chloride 2.5~5 mMol/Lで心室頻拍(VT)が起こりやすくなり、Cesium 0.125~5 mmol/kg でQT延長がおこる、とされています。
CsClの分子量は168.36 g/molで、セシウム自体は133くらいです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0

1mmol=133mgのセシウム137とざっぱに計算すると、
セシウム137の比放射能(ベクレル/g)は3.2×10^12なので、4.3x10^11ベクレルになります。こんな量はさすがに実験に使ってないと思います。ほぼテラベクレルオーダーですし。
ですので、非放射性セシウムを同量入れたとしても、影響は見られないと考えられます。
上のツイッターで言われていたのは、そこら辺の量が考えられていませんね。

フランス政府の指摘にも同様の点があるのですが、今回のバンダジェフスキー氏の論文と、セシウムイオンの心拍変化への効果というのは、分けて考える必要があると思います。
ここら辺、またややこしい点を論文にしたよなぁ・・・バンダジェフスキーさん

リーフレイン
Elyshaさん naka-take さん
詳しい検証をありがとうございます。
バンダジェフスキー氏の論文については、人のデータは検証困難だし動物実験では再現性がなかった、ということですね。
IRSNがチェルノ周辺の子供の1万人規模の調査を始めているようでその結果に興味がありますが、まだかかるようですね。
量的な問題もありがとうございました。(自分で計算しろよ、って)
医療用にも使われるぐらいですし、極微量のセシウムはそれ自体の生化学的特性では影響ないと考えていいのでしょう。

リンクの件は申し訳ない。最初は単純にミスったんですが、2回目のレスにつけたときは、、、、(まあラットの放射性セシウム投与だしいいかと) 他の人も見るところですから、もっと慎重にひいてこないといけませんでした、反省しています。
ペクチン はまあ、自分は読み飛ばしていますが、気にしているのは実験前の被験者の状況だったりします。
>低線量の被曝が心疾患を起こす作用機序が不明で、バンダジェフスキー自身もきちんと説明できていません。
そうなんです。論文でも自分で書いていたように、わかってない状態です。非常に困ります。
なるほど、結構集中的に被験者をベースに行っている研究にもかかわらず、無視されているのは、一つにはペクチンに拘ってしまった点、もう一つは、機序のなさなわけですね。 論文としての説得力が低い。
ただ、現実問題として、セシウム濃度をどの辺に見当をつけたらいいのか?という問いには、今、各々の日本人が答えを出さないといけない。 現象として現れていることを検証せざるを得ないジレンマがあります。  

バンダジェフスキー教授の 「放射性セシウムと心臓」もありがとうございます。ほぼあそこに網羅されてますね。 (よく見つけられましたね。ありがとうございます。自分、検索すると、なぜか本の販売のサイトばかりがヒットしてしまって、、、、諦めたんです)
↑は一読した限りで、とりとめのない 論文で、、4章以降が体内での動作を検証しているのですが、どうも生データをかき集めて載せたという感じがしました。 自分は放射能比と質量の問題がやはり気になって、ベクレル数があがってても、物質量は低いです。 量的には微量の放射性セシウムが有意に体内の何かに影響するタイミングはやっぱり崩壊時でしかありえないと思うのですが、崩壊時のエネルギーだけをとりあげると、既存のカリウム40の崩壊エネルギーのほうが大きいです。 細胞への損傷を考えるなら、そちらからの損傷との比較も加味してほしいです。 通常時の化学的作用にしろ、崩壊時の作用にしろ、そうした量的な検証が明確にでてきていないのが気になります。   なにより、損傷のデータが示されていても、それが何に起因しているかがよく分からない点に困惑します。
見ようによっては、「こことあそこを組み合わせて、こういう仮説が・・・」 とか読めないこともないのかもしれないのですが、それはあまりにも多様な可能性を秘めすぎていて、 一次データの元としてなら使えるのかな、、、、いや、限定条件が不明瞭なので使えないのか、、、ううむ

>ディスカスから
ラットの実験によって、心臓マーカーの値が上がったというのは、心臓関連の細胞の損傷によってマーカー値があがったと理解してみました。本来なら、バンダジェフスキー教授の「放射性セシウムは心臓に害がある」という論を補強する唯一の結果であるはずだと思うのですが、バンダジェフスキー教授の実験結果では逆に減少がみられています、、、さらに、フランスの実験でのマーカー上昇も、決定的な組織の変容は伴ってない。  この矛盾した状態を、フランスの実験者の側は、量的な問題ではないかと推測したうえで、(つまりフランスのラット実験のほうが経口摂取だったバンダジェフスキー実験よりもセシウムが多い、  同様なマーカー上昇は原発作業員レベルの被曝においてのみ見られた) 全身状況をみて、セシウムの摂取ではなくて、すでに発生している甲状腺での損傷が心臓の損傷に影響しているのではないか?と推論したということですね。
(しかも、フランスのセシウム投与実験では甲状腺関係のマーカーは異常が見られない、ということはセシウム甲状腺損傷はもたらしていないことになります。 )

naka-takeさん ここまで読んで気になったのは、 このフランスの実験で、セシウム投与によって上がったCKマーカーは、無視していい軽微な問題と、結論がでてるんでしょうか?  
そこがよく読み取れなかったです。
やっかいな検証をお願いしてしまって申し訳ないです。本当にありがとうございます。

リーフレイン
>625 Elyshaさん

防御的な数値ということで、チェルノブイリ初期の私営農場を預託実効線量でみてみると、、、

1歳から4歳までの4年間を毎日1000ベクレル摂取しつづけたとして、
実効線量係数:0.000012 生物学的半減期13日なので
4年の累積預託実効線量 1000×0.000012×365×4=17.52 m㏜  (1年で4.38m㏜)
継続経口摂取1000ベクレルで半減期13日の蓄積均衡量は 25000ベクレル付近なのでそのあたり。
(ほぼ2か月半で均衡量に到達)
1歳から4歳までの平均体重を15Kgとおくと、体重比は1666ベクレル/Kg 
カリウム40は60ベクレル/Kg)

大人と比較すると
大人の実効線量係数は 0.000013 半減期100日として
4年の累積預託実効線量 1000×0.000013×365×4=18.98 m㏜ (1年で4.74m㏜)
蓄積の均衡量は140000ベクレル  (体重比 2333ベクレル/Kg)


現在の日本の暫定基準は、年間で5ミリシーベルトまでの経口摂取をMAXにしているので、上のどちらも、実は、基準値内になります。 生産者が500ベクレルを目標にしてしまうとちょっと怖いですね。
あとNDのときの検出限界もある程度低くないと実態が分からなくなってしまうので、それも困るかなあ。 とりあえず検出限界値は明記してほしいと切に願います。

MAX仮定で計算するのはフェアでないので、今の日本で市場流通品を普通に食べるとどうなるかと考えてみると(自家栽培は除きます)
http://yasaikensa.cloudapp.net/Default.aspx

米:白米の状態で、5ベクレル/Kg  一日の摂取量300gとして→ 1.5ベクレル
水:現在はND 安全マージンとして1ベクレル/L 一日の摂取量2Lとして→ 2ベクレル
野菜:ほとんど未検出、安全マージンとして→1ベクレル (ちょっと低めに見積もりすぎ?)
果物:種類により要注意ですが、要注意果物も食べたとして10ベクレル/Kg程度 → 5ベクレル
肉:安全マージンとして(和牛事件があったので)  →5ベクレル
キノコ類: 要注意項目 あたると大きいので加算  → 5ベクレル
水産物: 知らないで食べているかもしれないので → 1ベクレル
煙草: ヘビースモーカー向け     →1ベクレル 
お茶:: ペットボトル茶を含めて安全マージンとして→1ベクレル
牛乳: 現在ND 安全マージンとして →1ベクレル
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大ざっぱにこんな感じを仮定して、一日あたり 23.5ベクレル

大人の場合で、年間預託実効線量 23.5×0.000013×365=0.11ミリシーベルト
蓄積量は1400×2.35で3290ベクレル  (60Kの人で、体重比 54.8ベクレル/Kg)

すべての品目でNDが多いですが、0と考えるのも論理的ではないです。それぞれ1ベクレル程度を計上してくと、結構値が上がります。体重比54ベクレルなので、バンダジェフスキー論文の閾を超えてしまうんですが、どうも なんとなく、これはこれでいいような気もしてしまったりします。最初の1年目でこれならかなりいいのじゃないかな?って思ってしまうんですよ。 とはいえ、今後数年間は、劇的に下がる見込みもない数値かもしれないと思うと、もうちょっとなんとかしないといけないのかな、、、、

追加資料 チ ェ ル ノ ブ イ リ近 郊 住 民 のCs-137体 内 量 の 測 定
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jhps1966&cdvol=31&noissue=2&startpage=132&lang=ja&from=jnlabstract

とんきょ

>リーフレインさん
>Elyshaさん
>naka-takeさん
 多数の資料提示、検証お疲れ様です。プライベートが忙しく、じっくり読む時間が取れ
なかったのですが、ざっくり読んでみて感じた部分をまとめます。
バンダジェフスキ(夫人?)論文(論文?):
http://tchernobyl.verites.free.fr/sciences/smw-Galina%20Bandazhevskaya.pdf
ですが、やっぱりいまいちおかしいような気がします。

まず、ペクチンを投与したら体内のCsレベル下がったのか、そもそもこれらの被験者群は
サナトリウム(合宿みたいなもの?)でCs汚染レベルの低いものを食べたから低下したのかが
この結果からは不明です。ペクチンを取らなくても下がるということは十分に可能性としては
考慮されるべきではないかと考えられます。

少なくとも、Cs高蓄積群がペクチン投与群とペクチン非投与群に分かれていないので、
端的にいって、「雨乞いをした→雨が降った→故に雨乞いは雨を降らすのに有効である」
というロジックと同じかと。

もう一つは食事状況がこの試験期間で変わっていることの効果です。Cs高蓄積群は「自家製
の高汚染食材を多く食べていた」ということになっているのですが、それは被験者の経済的
バックグラウンドを反映している可能性も否定できない(即ち、非汚染食材を購入することが
できるほどに裕福でなかった)かと考えられます。従って、それまでに栄養状態に問題があった
ために、健康状態に問題があったものが、食生活改善により一定の効果があった、と考える
事は可能ではないでしょうか? 勿論、2週間程度の食事介入で顕著な効果が上がる、という
のもさほど高い可能性がある要因とは言い難い面もありますが、その様なファクターも考慮
する必要があるかと思いました。

3点目は、この論文に書かれている介入試験がいつなされたのか、ということです。論文は
2004年ということになっていますが、例えば以前に話題になった同じくバンダジェフスキ氏の
論文(論文?)
http://tchernobyl.verites.free.fr/sciences/smw-Bandazhevsky_chronicCs137.pdf
は1997年あたりに計測したデータであると考えられます。恐らく、この時点でCsのことを
問題視しているということを考えると、論文?の試験もこのときとさほど変わらない時期に
実施されたのではないかと考えられます。

そうすると、論文?の被験者の平均年齢は大体12歳(範囲は7~17歳と書いてあったと思い
ます)と、被験者の多くはチェルノブイリの事故が発生時あたりに出生、あるいは幼児期で
あったということになります。そうだとすると、放射性ヨウ素の影響も(論文中では言及していま
せんが)無視できないように考えられます。更に、Group3は、自家製の食材を多く摂取してきた
ということで、この際に放射性ヨウ素を多量に含むミルクを多量摂取していたということも十分
考えられます。

 ということは、彼らの疾患に罹患している率が高いのは、幼児期の放射性ヨウ素の被曝に
起因する甲状腺機能の障害が原因であるという可能性も排除できないかと考えられます。
>630のnaka-takeさんの指摘にもあるように、甲状腺機能障害の方が原因であるという仮説の
方が、全体として整合性が取れる(勿論、ヨウ素が原因でCsが原因でない、ということを主張
するものではありませんが)のではないかな、と思ったしだいです。

 読み落しとかあるかもしれないので、指摘していただけると幸いです。

リーフレイン >640 とんきょさん

実は、ほとんど同意です。

まず、ペクチン効果の統計的優位性について
ご指摘通りだと思います。 対照実験の取り方がおかしくて、
グループ1は通常でも良好な食事を摂っているグループなので、おそらくサナトリウムの食事でも、数値的にはほとんど変わりがなかった可能性が高いです。したがって、仮に、食事の効果によって、セシウム濃度が下がったと仮定すると、グループ1にその効果が表れないのは当然です。
グループ2、3は普段の食事の数値が高いがゆえに、セシウム濃度も高いわけですから、16日間の治験で排出が進み数値が下がるのが当然です。その当然の減少分の中で、ペクチンの効果を抽出したいのならば、同じグループ2、グループ3の中で同じ人数比でペクチンを与えない実験群をつくらないといけなかったと自分も思います。
ペクチンに関しては、この統計は意味がありません。

治験時期
1998年には、バンダジェフスキー先生は収賄の容疑で逮捕され、翌年釈放、釈放後はミンスクで軟禁、その後フランスへという経過をたどります。 したがってこの実験は1998年以降ということはまずありません。(おそらく1997年付近)
対象者は平均年齢が10歳以上ですから、半数は確実に事故の影響を受けています。加えて、被験者の居住しているゴメリ地区というのは、ホットスポットにあたっていて、汚染が判明するのがかなりあとになってからでした。 事故後数年の間、無造作に食事を摂っていたと推察されます。
ヨウ素131の影響は確実にあったはずですし、セシウム蓄積も高かったと思います。
私営農場のミルクの濃度の変遷をみると、1993年にがたんと数値が下がります。ソ連が崩壊し、新しい制度が立ち上がってきたあたりですが、、、1987年から1993年までの6年間を高い濃度の食事を摂り続けたとしても、そこから食事制限をすれば、セシウムの体内蓄積そのものは1年で排出がすすみますから、1997年付近で、グループ3の平均値である血液比100付近になっていることは可能性としてあり得る話です。
つまり、1997年時点ので血液濃度がわかっても1987年から1993年までの内部被曝の程度を予測はできないということでもあります。(もっと早く測らないといけない)

(この実験時期の考察はあとで修正が入ります。2001年付近と推定。)

この実験で、参考になると自分が思うのは
1、実験前の調査で、セシウム濃度に比例して、高血圧、心電図異常、自覚症状が出ている点
とくに高血圧症のグラフ2が問題で、 高血圧傾向を示す真ん中の数値に注目すると、グループ1では全体の9%に過ぎないのにグループ3では50%にあがっています。ということはセシウム血中濃度100ベクレルは、血圧への負担につながる可能性を示唆しています。 同時に、低血圧のパーセンテージも注目に値して、グループ1で6%、グループ3で10%です。このことは、低血圧傾向につながったとしても、どれも症状に出るほど悪化する濃度ではない、ということも同時に示唆してると思うのです。
セシウム血中濃度100の意味づけの参考になるかと思います。

2、実験後の調査で、セシウム濃度がグループ2、グループ3で下がった点(←食事の効果が高い。セシウムの経口量の調整は大事だという意味ととれます。)

3、実験後の調査で、自覚症状は下がったけれど、血圧傾向と心電図の異常はそのまま残った点
この意味はいくつか考えられて、、
☆、セシウムの濃度が短期的に下がっても、体への影響はすぐにはでない、ということ、(セシウムの細胞へ回ってしまったものが排出されるまでのタイムラグを考えれ、ばある程度当然かなとも思います。
このことは同時に、セシウムそのものの影響が非常に緩慢である可能性も示唆しています。 
☆、体内での異常のほとんどが、すでに損傷を受けてしまっている過去の被曝によってもたらされたものだとすると、短期的なセシウム濃度の低下は大した意味をもたらさないかもしれない可能性
☆自覚症状がなくなったということは、自覚症状のほとんどがじつはストレス性のものであった可能性

あたりだなと思いました。 フランスの実験のディスカッションで見られた考察は、納得のいくものですが、↑1番の点だけは見落としてはいけない部分かなとも思います。 

naka-take >640 とんきょさん
>641 リーフレインさん
ちゃんと論文を読める方がいて心強いです。
なかなか他ではできませんから♪

バンダジェフスキー氏の論文だけ読んでも、得られる情報が少ないので、とりあえずは関連しそうな文献を検索しておきました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?Db=pubmed&DbFrom=pubmed&Cmd=Link&LinkName=pubmed_pubmed&IdsFromResult=18327657
chronic 137 cesium あたりで検索すると
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=chronic%20137%20cesium
も出てきます。全体を俯瞰するにも有益と思い、提示しておきます。

例えば、641で挙げられているような
>1、実験前の調査で、セシウム濃度に比例して、高血圧、心電図異常、自覚症状が出ている点
と、いう場合には、事前に想定しておくべきことが(当たり前ですが)かなりあります。

事故の影響が強い、というのと、精神的・肉体的ストレスが大きい、というのは正の関連性があるでしょう。僕が挙げたフランス政府がリファレンスしているラットを用いた検証論文でも、血圧はむしろ低下していました。精神的なストレスが強くなると血圧が上昇する事は良く知られており、筆者らは事故による高血圧は、慢性的な放射性セシウムによる影響とは考えにくい、としています。

しかしながら、他の組織に対して、低線量被曝による肉体的な影響があるのかもしれません。そういった点を考える上でも、「低線量被曝でどのような健康被害が想定できるのか、また実験検証で確かめられているのがどういったものがあるのか」という点を把握する必要があります。放射性セシウムによる低線量被曝が『どのように』作用したのか、という点が非常に大事だ、ということです。これが相当に仮定を置いて繋ぎ合わせないと、事実と結び付けられないのであれば、より簡単に結び付けられる「精神ストレスが大きかったから」という論拠のほうが、説得力があるのです。

オッカムの剃刀という考え方に近いです(これが真偽を判断する一番良い方法というのではありません)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%89%83%E5%88%80
単純に説明が付けれれば、そちらのほうに「なびく」というのは、致し方の無いところです。


心電図異常をどう評価したのか、自覚症状をどう定義するかも、非常に難しいです。そこは3で挙げられる理由とあわせて考える必要があります。

あと、本当に統計的に意味のあるサンプリングをしているのか、という点も疑問視されています。
http://www.springerlink.com/content/e706705592415435/fulltext.pdf

本文を精査する前に、最低限、ここら辺を意識した方が良いと思います。

いずれにせよ、どう考えるかを明確にするには良い機会ですし、ちゃんと考えたいと思います。詳細はまた後ほど。

Elysha >リーフレイン さん

PC環境がなくて、スマホからなので、一点だけ。

>>1998年には、バンダジェフスキー先生は収賄の容疑で逮捕され、翌年釈放、釈放後はミンスクで軟禁、その後フランスへという経過をたどります。 したがってこの実験は1998年以降ということはまずありません。(おそらく1997年付近)
<<

この論文は、氏の奥さんが発表しているので、そうとは限らないです。それでも数年の差しかありませんが・・・

計算有難うございました。また明日コメントさせていただきます。


リーフレイン
>642 naka-takeさん

参照論文群なんですが、要約以上の本文を読むためにはどうしたらいいですか?

naka-take >648 リーフレインさん
大学図書館かなぁ・・・
PDFをどこかにうpてのは、学術的な目的であってもNGのはず。
あとはリンクのとおりに支払っちゃうか、ですが・・・orz
PubMedのリンクから、FreeTextという項が右に出るはずです。
それらは全部無料で読めます。

リーフレイン >644 Elyshaさん

>奥さんの論文
あ、そうかそれで、バンダジェフスカヤ名がトップに来てるんですね。 なるほど、、、
じゃあ、可能性として、被験者の子ども達が事故後に生まれてる%が多い場合も考慮すべきということですね、、(7歳から17歳なので、一部はきっと事故前ですが、、、)

リーフレイン >649 やっぱりそうですか、、、フリーのはすでに読んでるやつだったりするんですよ、(福島教授のチェルノブイリ膀胱炎と、今回の、と、ラットの分)  大学図書館のアクセス権は持ってないしなあ。。。なにせ学術的な話とはあさってのとこで生活してきてるので、、小僧のアクセスを借りるか、、、

naka-take あ、正しくは「Free Full Text」ですね。失礼しました
あまり知られてないフリーの論文としては、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2459146/?tool=pubmed
とか
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1469938/pdf/envhper00331-0140.pdf
とかは、なかなか参考になるのでは、と思いました。

cesium Chernobyl で探すと、26件のフリーテキストがでますね。
まぁトンデル論文とかバンダジェフスキー、バズビー、ネステレンコ、と見慣れた論文が、フリーの論文中に多々目に付きます。これってなにかしらのバイアスがかかっている気がしますが、よく分かりません。ダウンロードの数、とかなのかなぁ・・・

Abstractで興味のある論文があれば、査読モードで紹介しますよ〜時間かかるかもしれませんが。


Elysha >リーフレイン さん

論文を手に入れる方法としては、著者に別刷を送ってもらうという奇策(?)もあるんですが、今回は現実的ではないですよね。

でも、free で読める文献なんて昔(20年以上前)は考えられませんでした。
ネットのない頃は、どんなマイナーな論文でも、購読しているところから手に入れなくてはなりませんでしたから。

オンライン検索なんてまだ使えない頃は、INDEX MEDICUS という電話帳みたいな雑誌か、Current Contents という雑誌で キーワードや雑誌名を頼りに論文を探して、そこからさらに孫引きして・・・の繰り返しでした。
今では居ながらにしてメジャーなものは abstract ぐらいまでは読めますから、隔世の感ですね。

でも本文を読むと abstract とは全然違う論文もあったりするので要注意ですが。

雑誌の講読というのはかなりお金がかかるので、大学等にとっても頭の痛い問題です。小さな地方大学などは購読 title 数を減らす一方です。
年間億の単位で予算を組める旧帝大クラスでなくては、もはや十分な雑誌数を保有できなくなっています。

・・・思わず愚痴のようになりました。閑話休題


食品からの摂取量の計算で、ND=1 はちょっと極端すぎるかな、と。
すべての食品(輸入品も含めて)が0とは言えないので、全員毎日10ベクレルは食べていると思わなくては!ということでもいいんですが。

もう少し書きたかったのですけど、ちょっとまとまらないのですみません。