重治の妹で詩人・鈴子の生原稿公開  丸岡図書館

福井新聞】1月16日午前11時06分
中野鈴子特別展で展示される鈴子の直筆原稿や関連資料
 福井県坂井市丸岡町出身の作家、中野重治の妹で詩人の中野鈴子(1906―58年)の没後50年にちなむ特別展示が16日から、同市丸岡図書館で始まる。鈴子の特別展は同図書館でも初めての企画で、鈴子の詩3編の生原稿を公開するほか重治の妻、原泉からの書簡や関連資料など”福井の女性詩人”の先駆けともなった鈴子の足取りや才能を知る貴重な展示となる。 鈴子は兄、重治と同じ丸岡町一本田生まれ。重治の支援を受け、プロレタリア文学運動に参加し51年に文芸誌「ゆきのした」を創刊。58歳で死去するまで詩を中心に数多くの作品を残している。 特別展は、重治の陰に隠れ、これまであまり光が当たってこなかった鈴子に注目しようと、没後50年を機に企画された。 展示品は原稿や雑誌など20点と書簡類は88点。その多くは、鈴子研究者の大牧冨士夫さん(80)=岐阜県在住=から一昨年、同図書館に寄贈されたもの。 目玉は鈴子直筆の原稿3編。「著者に贈る」(38年)、「三界に家なし」(47年)、「突然に」(51年)と異なる年代の作風をそろえた。このほか鈴子が日常のことを書き留めたとみられる「創作ノート」も展示される。 原稿以外では、重治の妻で女優、原泉から、鈴子にあてた47年の書簡がユニークな資料。「お金のこと、支払いのこと」と題した手紙で、重治の「斉藤茂吉ノオト」の原稿用紙裏面に記しており、文人一家の日常の一端を垣間見ることができる。 また関連資料では兄・重治が、関係者に出した鈴子の告別式の通知はがきや鈴子作品の掲載雑誌、そのほか鈴子に絡む書簡も多数公開する。
 同図書館では「鈴子の資料は少なく、これまで公開できなかった。これを機に郷土の詩人を知ってもらえれば」と話している。
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