H氏賞」後世に 電子書籍化作業始まる 坂井・三国図書館

福井新聞】1月8日午前10時39分
  ”詩壇の芥川賞”として知られる「H氏賞」の歴代受賞作を、全国で唯一すべて保管している坂井市立三国図書館で、三国高の生徒による受賞作の電子記録化作業が6日から始まった。データ化によってH氏賞の全作品を全国どこでも、誰もが手軽に読むことができ、特に若い世代に詩の世界に触れてもらおうというのが狙い。同高の生徒はボランティアでスキャナー入力作業に当たり、10月の全作品電子書籍化を目指す。
 H氏賞は、福井県坂井市三国町出身の故平澤貞二郎氏が、日本現代詩人会に基金を投じ1951年に創設。その後、現代詩の優れた新人を顕彰する賞として文学界に定着、同町出身の荒川洋治氏や三木卓氏、ねじめ正一氏ら63人が受賞、その多くが作家や詩人として活躍している。
 受賞作の電子記録化は、貞二郎氏の二男、照雄氏=東京在住=が会長を務め、同賞を資金援助している東京の「協栄産業」が企画し、若い世代に詩への愛着を持ってもらおうと、三国高に作業を依頼した。
 作業は6日から同図書館2階の一室で行われ、この日は女子生徒6人が参加。同社社員の説明に耳を傾けながら、同社から無償で貸し出されたパソコンとスキャナーを使い、歴代受賞作の冊子を1ページずつ丁寧に入力していった。
 作業は今後、平日の放課後と土日、祝日の日中に生徒11人がボランティアで行い、9月末までに全63冊、約7000ページをスキャナー入力する。参加した1年の浅田琴美さんは「根気のいる作業だけれど、早く慣れるように頑張る」、宮川愛理さんは「今までは詩はあまり興味はなかったけれど、作業の合間に作品を読んでみたい」と話していた。
 本によっては、文字がかすれて読みにくくなったページや個所もあるため、入力したデータは、同社社員が定期的に本社に持ち帰り、汚れやシミなどを補正する作業を経て、10月をめどに電子書籍化する。CD―Rなどにして、同校や同図書館、日本現代詩人会などに配布する。また著作権の問題がクリアできれば、インターネット上での公開も予定している。
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