岡本太郎の先端性を語る 赤坂憲雄さん・荒川洋治さん

asahi.com】2007年10月30日12時42分

 『岡本太郎の見た日本』(岩波書店)で、第17回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した東北芸術工科大学大学院長・赤坂憲雄さんが、選考委員で現代詩作家の荒川洋治さんと先日、東京都内で対談した。
 「芸術は爆発だ」というコピーなどで大衆的な人気を得た芸術家・岡本太郎。受賞作は、縄文土器を高く評価し、東北や沖縄を軸に韓国に至る独自の日本文化論を展開した岡本の民族学的な仕事に光をあてた評論だ。
 対談では赤坂さんが、岡本を歴史家の網野善彦氏と比較し、「(岡本)太郎も最初から日本を相対化した。欲望のありようが似ている」と分析。30年ほど前、岡本と浜田幸一衆院議員の、かみ合わないまま戦うような対談をみたという荒川さんは「無理解という壁に太郎は身をさらした。今は作家も詩人も戦う人がいない。弱っている感じがする。芸術の中に安住して自分たちの欲望を形式化するとダメになる」と語った。
 「太郎はあえてパフォーマンスすることを選んだ。“知”の状況を先取りしていた気がする。私も講演会では言葉を届けるために苦労する。共通の言葉の水準をどこに設定すればいいのか、厳しい状況にある」と赤坂さん。最後は岡本の著書を、養女で秘書だった故敏子さんが口述筆記していたことにふれ、「敏子さんとの共著と言わねばならない段階に来ているのではないか」と締めくくった。
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