木刀

木刀が鳩尾に突き刺さった友人が転がりこんできた
もう動く元気もなさそうなのでまずは木刀を引き抜く
案外と浅く、5センチほど下向き斜めに刺さっていて、
血は流れず、中に深い穴が開いた。本人死ぬ気配はない
だが、なにかがきらっと光るの ?とのぞきこむと
一升瓶がまるごとはいっていた。「ほほー」と思いずぼっと引き抜く
すると口の部分が割れている、これは体の中にガラスが残ってしまうと
深い穴のなかに、ぐぐっと腕を突っ込んで穴の中を捜す。奥の奥にもう
一本酒壜がはいっていて、それもやはり少し割れてこわれていた。破片
はもう見つからない。「こんなもんを抱え込んで、普通にしてたやつなら、
ガラスの破片ぐらいはてきとうに処理してしまうだろう」ぶつぶつ
つぶやきながら、探索はあきらめて穴を縫い閉じておいた。
あとで聞くと、酒壜は前回うちに訪れたときについ壜ごと飲み込んでしまったもので、
見つかりそうになったので焦ったのだと、のたもうていた。
「お前の胃袋はドラエモンのポケットか」「飲み込むばかりで出てはこないんだ」