砂原に

砂原に




砂原を歩いていると、人間の手が蠢いていたので、掘り出した
父だった
父はこんなところに埋まっていたのだ
途中から誰かがわかったので、指先でなでるように、焦って掘り出した
息をしていた


父とはもう語ることはなかったので、
一緒に砂原に座っていることにした


陽がさんさんと照り
風が砂を運び
遠くの空をなにかが飛び去って
足元で虫が這い
父は横に座っていた


風が夜を運び
砂が湿り気をおび、
夕焼けの赤いベールが閉じられていって
父は横に座っていた


長い、長い夜が
一息一息の呼吸をルーペで覗き込むような細密さで
私と父に刻印を刻む
父は ただ横に座っていた


白い朝を迎えるころに
私はもう一度父の上に砂をもり
父の手をたった一度だけ握り締めてから
家へ帰った