ブログ 書評空間 東京大学(英米文学)阿部公彦

『How to Read a Poem』Terry Eagleton(Blackwell Publishing) →bookwebで購入
「詩を語るイーグルトン節」

 タイトルは直訳すると「詩の読み方」とか「英詩のわかり方」くらいか。
 え、あの理論派イーグルトンが詩の入門書?とびっくりするかもしれないが、英米の大学ではかつては、英文科に入った人間がまず最初にやらされたのが、詩などのテクストを用いたpractical criticism(実践批評)だったのである。practical criticismとは批評の基礎トレーニングみたいなもので、紙と鉛筆を手にいきなりテクストと面と向かわされ、「さあ、何が言えるかやってみましょう」と分析をさせられる。野球でいえば、キャッチボールのようなもの。あらゆる批評の基礎たるべきものだと筆者も思う。テクストとしても、詩がちょうどいい。
 イーグルトンも若い頃はこれをやらされた。それが今では、すっかりそういう伝統が廃れてしまって・・・という嘆きから本書は始まるのだが、「そりゃ、あんたのせいだろ」と言いたい気がしないでもない。少なくともLiterary Theory(邦訳『文学とは何か』大橋洋一訳)を読んで、よし詩を読もう、という気になった人はあまりいないのではないだろうか。

 では本書は、作品テクストに対するイーグルトンのせめてもの罪滅ぼしか、というと、答えはイエス & ノーである。目次を見ればわかるとおり、冒頭に「批評の機能」という章があって、その次にやっと「詩」が来るのだが、その章タイトルも'What is Poetry?'(「詩とは何か」)。つまり本書のタイトルのHow to Read a Poemとは裏腹に、イーグルトンが俎上に載せようとしているのは、ひとつひとつの作品ではなく、詩というジャンルそのものなのである。

以下サイト参照

http://booklog.kinokuniya.co.jp/abe/

冒頭の「英米の大学ではかつては、英文科に入った人間がまず最初にやらされたのが、詩などのテクストを用いた。。。」と言う文で思いっきり驚いた。なるほどーーーー。