人間の幸福


ハッピイアイランドへようこそ

ようこそ、ようこそ、さあ花束持って
ようこそ、ようこそ、記念撮影、
あなたはハッピイアイランド入島1万人目!
いつでも誰でも1万人目!

おめでとう、おめでとう
      おめでとう、おめでとう

ハッピイアイランド 誰もが幸福
青ざめた小学生もニコニコ笑い
疲れ切ったお父さんも元気はつらつ
額の皺がきざみこまれちゃったお母さん 笑って笑って

ナイフもってきた?
バナナにかえて
バナナは熟れすぎないうちに食べちゃわないとね
あたしがもらってよろしいですか? ぱくぱくぱく、ああ、食べ時でしたよ
いい熟れ具合で。

縄で一緒にブランコつくり。
ぶーーら、ぶーーーらぶううら、ぽーーん。空もでんぐりかえってきゅうきゅうきゅうん

ご飯いらない、トイレもいらない。
寝てもいい、歌ってもいい、跳んでもいい、
風船のように軽くなって、おじいさん浮かんでますよ。
おめでとう、おめでとう、ハッピイアイランド 常春の島。


★★★★

道端に座った乞食、古びた作務衣に色褪せたぼろのシルクハットをかぶっている。
服は穴だらけ、もはや修復もきかぬであろうほどに擦り切れ、あまつさえ、なにやら尻のあたりにつけたままかまうことなく、ほのかに異臭漂い、さらに彼の前には一対の看板、歪んだ楷書で”観客の乞食””まずは耳を拝借いたしたく”と墨書してある。

「そこな、お通りの旦那さん、ちょっとお耳を拝借いたしたく。なに、ほんのちょっとの間借りでございますれば、ずずずいずいっと前にいらして、しばらく耳をはずしてくだされば、はい、おはずしいただけましたか、おありがとおございます。
さてこそ、ここにおいでの皆様がた、こここそ永遠の樂土、この世の天国、願うことはすべてかない、願わないこともすべて叶うという奇跡の島でございます。この奇跡の楽土になにゆえあたしのような乞食がおりますならば、あれ不思議、あたしにいてほしいと願う方がおりますからに相違ありませぬ。いやいや、そんなまさかという顔をなさりまするな。そりゃあ、あたしの体は汚くて、ふた目と見られぬ醜男、手足もどうやら不自由ではございますれば、かような下賎なものをわざわざ見たいと思われることなぞないと考えなさったでありましょうが、いや、いや、そこで小一時間、何もかもがかなえられるこの島、食べる必要もない山海の珍味も思えばその場に浮かび、抱きたいとのぞむ絶世の美女眼前に出現いたします。これほどの果報はなしぞと思ううちに、我の幸せなありさまを誰ぞに賞賛してもらいたくなるのが人間と申すものでして、いやはや欲望にはきりがないのか、そもそも人の根底から湧きいでる欲望なんざ、他人の不幸にひき比べる幸せにくらぶれば、さほどのこともないのでありましょうか、まこと、下々にうらやましく見てほしがることのようでございます。そのように思えば思うほどにあたしが出てまいりましてございます。あたしは、目は見え、あてがいを食らい、屁をひり、女を抱くこともかなわぬままもんもんとしております。寒さには震え、雨にあたってはぬれそぼり、暑い日差しに日干しになって、人さまの慈悲にすがって口を漱いでおりますゆえに、右や左の旦那さま。どうか、哀れな不自由モノを哀れとおぼしめしましたならば、ほんの時折、食べ物恵んでいただけますようひらにひらにお願いもうしあげ。」
はいつくばって、伏しながら、上目づかいで哀れな顔をしてみせた。

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「さようでございます。あたしは、すべての願望をこの目で見、聞き、許されるのならば触れさせていただいております。願望の出現は、あたしには決して許されることのないお恵みでございますゆえ。」

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「あたしは、みなさまの願望でございますれば、自分で望むことなどございません」

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「そりゃあ、そうでございます。あたしが無感動なら意味がありませんにゃ」

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「困りますよ、そんな願いを、あははは、みなさん結構そのことを口になさいますよ。旦那さまもきっとあたしが旦那さま方のお仲間になりたいと思っているんじゃないかとお考えじゃありますまいか? まあ、仮にあたしがそうなったとしても日を置かずして次のあたしが出現しちゃうんですが、とりあえずあたし自身はこのまんまで結構でございます。
・・・・・・そうですねえ、願望と申しますならば、夜に雨に濡れないですむ、屋根がほしゅうございます。」
「ああ、でもあたしのために願わないでくださいましな、旦那さま。たいがい、なんかいいことが起こりますとね、きまってもっと悪くなっちまうんですよ。不思議なもんですなあ。はははは」

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「それこそ、あたしの役目でさあ。旦那さま。まっかしてくださいまし。」

「こほん、 ではまずおあしを、口を滑らすにはほらあれがよろしゅうございますよ。」

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「ほほほ、浄土水でございますよ、般若湯。おちょこ一杯で? 」

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「あたしが味見してさしあげまさあ。」

「へへへ、」

「さて、口がなめらかになったところで、今日のお話
皆様は、疲れきってこの島に到着なさいます。もう身も世もないとはこのこととばかりに、骨と皮にやつれはて、眼は落ちくぼみ、皮膚はまるで死人のごとく生気なく、髪もなにやらぼそぼそになって、なんですなあ、よほどあちらは過酷な生活があったご様子で、ついたとたん、それこそ死んだように眠られる方ばかりで。」


!!!

「へえへえ、旦那さまはめずらしゅうございますな。あの到着海岸を見てごらんなさいまし。ふくよかな布団やベッドや緑の木々のハンモックが点在しておりましょう。まずはみなさん、よく慣れたせんべい布団を出現なさいますが、数日眠るうちにだんだんと美しい夜具になってまいりますよ。」

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「さようでございます、寝てるだけなら、あたしなんざ出現するはずもございませんわ」


まだ続くんだけど、データをコピしてくるのを忘れた。
やれやれ、、、不自由だね、、