私学サマーセミナー 今中哲二先生  2011年7月 名古屋、東海高校にて

愛知県の私学の会では、毎年3日間のサマーセミナーを開催するんですが、その期間、名古屋周辺の私学の校舎を使い、数百個の講義を無料で県内の高校生と父母その他へ提供しています。たまたま この頃よくお見かけする、京大の原子炉研究所の今中先生も呼ばれてらしたので、聞きにいってきました。

「福島で起きたこと  −そしてこの国の未来ー」 というタイトルです。

まずは、日本に原子炉が作られ始めた経緯から。
基本、原子炉はやばいものです。 どのくらいやばいかというと、1960年に、「原子炉が事故った場合に、どの程度の被害がもたらされるか?」という調査が日本原産会議報告で報告されたんですが、

電気出力 16万KW
放射能放出量 10000万キュリー
急性死者  540人
急性障害 2900人
永久立ち退き人数  3万人
農業制限、除染面積  3万60000平方キロメートル
損害評価額  約1兆円
当時の日本の国家予算 1.7兆円

という試算だったのだそうです。 (現在は電気出力100万KWのレベルの原子炉が多いですね)
その結果どういうことだったかといえば、 保険会社が保険を引き受けないんですよ。 保険がないですから電気会社も作ろうとしませんでした。 それをなんとかしないとまずいってことで 原子力損害賠償法が1961年に制定されました。 内容は 自然災害が所以となる大きな原発事故が起きたら、電力会社の賠償は 一定額(当時で50億、現在で1200億円までです) で免責になり、残りは国が面倒をみる。 という内容です。 (つまり今回の福島でも東電が完全に開き直ると、ここを論拠に賠償を逃れる可能性は残されています)
この法律の制定によって、原発の建設が行われるようになったそうです。いやあすごいですね。  民間の保険会社による民間の住宅保険の項目には、原子力災害による被害は、保障しないと、しっかり謳ってあります。 (今でもです) それだけやばいという認識があるんですね。


さて、胡散臭さ満載のスタートなわけですが、バックには色々あって、例えば電源3法というのがあります、これらによって原子力関連の国家からの出費は、一般財源からのと、もう一つ特別会計が組まれてます。 2009年あたりだと一般会計から1100億、電源特別会計(今のエネルギー特別会計ですが)から3500億円が出費されてました。 
これらの出費が何にあてられていたかというと、
1、もんじゅですね。今実質止まってますが、止まってる状況で毎年100億、作るときに6000億ぐらいかかっているそうです。
2、 六ヶ所村 これも貯めてあるだけでガラス化が稼働してないんですが、1兆円以上。
3、ウラン濃縮工場 (これも動いてないです)
4、高レベル廃棄物処理関係
一応地下深く埋める予定になってるんですが、場所がないんですね。今だと「うちの地域へ」と手をあげるだけで20億が動くようになっちゃってるらしいです。手はあげても地元の反対が強くて結果ぽしゃってます。
まあその他、各原発の地元対策とか、エトセトラ、、、です。

政治と電力会社と、メーカーと役人と学者の利権構造ができちゃったんでしょうね。 
(その他にも 「核兵器オプション」という意識があると先生は思っておられました。「核兵器オプション」とは、日本は核兵器は作らない。 作らないけれど作れるだけの技術は保持しておきたい。という意図なのだそうです。)


チェルノブイリで何が起きたか?というのは、実際のとこチェルノブイリの最初の実態は今でもわかってないです。  チェルノブイリから学んだこととは

原発で大事故がおきると、まわりの村や町がなくなり、地域社会が消滅する
放射線被ばくは健康影響の原因の一つにすぎず、健康影響は被害全体の一部に過ぎない。
・専門家的アプローチであきらかにできることは、チェルノブイリ事故という災厄の1側面でしかない

ということだそうです。 

まあ、とにかく地震の多い国なわけですから、原発にとって立地がいいわけないんです。
やばいことはやめにして、電気が足りない より 使いすぎを考えてみましょう。
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質疑応答では
高濃度汚染された瓦礫処理について
→ 非常に困ってますね。 行先が現状でもないので、最終的には福島原発周辺に用地を確保するしかないような気がします。

廃炉についてどのような手順で
→ まず2.3年はそのまま冷却ですね。その後数十年をかけてすこしづつ燃料を取り出したり、建物や原子炉を解体して、埋め立てたりしていくわけですが、ひじょうに大変です。大変なうえに全然楽しくないんですよね、僕らにとって。すごく頭が痛いです。

福島周辺の子ども達で鼻血が出たとか報道がありましたが?
→ それはたぶん僕らの常識ではちょっとありえない状態なんで、放射線以外の話なんじゃないかと、、

3号炉が核爆発ではないかと、インターネットで?
→もし核爆発だったとすると、燃料プールの燃料の話になるんですが、もしそうだったら、今よりもっと高濃度かつ核種も色々な拡散があるはずなんですよ。だから核爆発ではなかったんだと僕は思います。

御用学者vs反骨精神の京大(冷や飯食い)学者という構図が浮き彫りになったんですがその状況に対して怒りとかそういうものはないですか?
→ いや、きちんとしたことを言っている方も大勢いて、そういう方まで酷い言われようをされるのはどうかと思うんですが、、この頃、どうもメディアの方向が変わってきたなあと思って、記者さんと話してたら、東電からの広告収入が減ってきたから、発言が自由になってきたんですよ、ていう話をしてくれたことがありまして、なるほどそういうこともあるのかなと、、、ただ、まあ、現状、日本の学者はもうだめですね。とにかく研究費がないんですよ。研究費がないんで、大学当局から、「自分で研究費を確保してこい」と言われます。確保といえばやはり企業からってことになりますから、どうもひも付きになって、視野がせまくなってくんですよ、学問的な自由度が失われてしまいます。 どんどん厳しくなる一方ですよ。まだ京大とかは  ましなんですが、地方の国立大学とか悲惨な状況になりつつあります。

もし、他の場所で原子力事故が起こったとき、どこに拡散するかとか予想はできますか?
→現在でも予想はできてたんですよ、SPEEDIですが、、ただ、なんかの事情で表にだしてもらえなかった。なんの事情だか僕にはさっぱりわからないですけどね。 まあパニックを恐れてというあたりだったのかもしれないですね。 問題は技術ではなくてそれを使う人にあります。

美浜で事故が起きたら、名古屋でも被害ありますか?
→100kぐらいだから、ある程度影響あるかもしれませんね、風しだいですよ。

他にも、いくつかエピソードがあって、 

チェルノブイリ周辺の2000年当時の写真があって、広大な敷地に整然とトラックとか、おそろしく大きなヘリコプターとかが放置したままさびてるんですが、それらは 石棺化作業とかのときに使われた機器で、汚染されているから放置してあるそうです。 そういう場所が数か所あったそうです。

3月26日付近に、飯館村に行ってきた話もあって、一番高いところで30μシーベルト/hが計測されていました。 なのにまだそこで生活していて、それはまずいのではないかと思ったそうです。同様に福島市でも15μシーベルトぐらいあって、こちらでは完全に普通に生活していて、マスクもしてないし、子供たちもいるわけです。やはりちょっと危惧をおぼえたという話をしていました。 とにかく初期のうちに、内部被曝を測ったり、線量をきちんと出したりしないといけないのに、そういう作業がとにかく遅れていて、まずいなあという話でした。

3月4月に急いでやらないといけなかったの除染で、 高圧放水車で町の建物や色々に水をまきまくるだけで、相当ちがってたと思ったそうです。 

(↑これについては、まだ地震津波も被害甚大なころってことだから、実質的に無理だったろうなあと思いました)

こまごまあって、ちょっと忘れてしまったんですが、まあ1時間半の講義なのでこのぐらいだったかなと思います。
自分は、低濃度の汚泥に含まれた放射性物質の処理について聞きたかったんですよ。どうしたらいいのか?、政府の方向性は どっちかってと線量が薄い分に関しては、薄く広く、道路とか建物とか、肥料とかいう形で、環境に戻してしまいたがってるような気がしたんで、それが評価できるかどうか?という点ですね。 質疑応答が短くて、質問者が非常に多かったので断念しました。 パンダジェフ教授に話の信頼性もお聞きしてみたかったひとつですが、さすがにレアな話なんで、ちょっとああいう場では無理だろうなあと、、、でも聞きたかったですね。今中先生はパンダジェフ教授が拘束されたときに、非難の声をあげた一人だったんですよ、書簡が残っています。お知り合いだったんだと思ったので、、、、どうなのかなと。

まあ、仕方ないかな。大勢さんの講義ですしね。写真とってきました。


もう一つ大事なことをいっていました。

「これからの日本は、どれぐらいの被曝まで我慢できるか?考えながら生きていく社会です」という言葉でした。




“100 ミリシーベルト以下は
影響ない”は原子力村の
新たな神話か?
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/etc/Kagaku2011-11.pdf